「和田怜士は頑固な野郎だ」という認識は、半分当たってるけど半分間違っている。実は人の言葉をよく聞いているし、参考にしている。「モノ申す!」的に意気込んで投げかけてくる言葉には一切耳を傾けないけど、人が、特に音楽をやる側ではない人が呟いた何気ない一言については聞き逃すことがないように気をつけている。
それは、ソロで活動を再開してから現在に至るまでの俺の動きを見てもらえばよくわかると思う。短期間のうちに色々と、始めたり、やめたり、続けてみたり、立ち止まったり、方向転換したりと試行錯誤してきた。これが全部自分の考えによるものかといえば、そんなわけがない。例えば、短いスパンで次々に音源を発表していくというアイデアは俺自身のものだったけど、動画を製作して公開していくというアイデアは周りから聞こえてきた言葉を取り入れたものだし、ひと月に一度のペースでライヴをし続けるという考えは俺自身のものだったけど、ライヴにある程度の間隔を設けるようになったのは周りの、芸術は芸術でも音楽外のことをやっている別業種の人からのアドバイスを取り入れたものだ。
歌うたいって、バンドマンって皆頑固だ。頑なにやり方を変えない。でも、それをとやかく言うつもりはない。継続は力なり。それはそれで凄いと思うし、立派だと思う。ただ、俺があの人たちよりも頑固だと言われると首を傾げたくなる。
俺は自分にとってベストな、自分のやり方を模索してるだけ。模索する中で、絶えず取捨選択する。俺は「取」と同じくらい、もしくはそれ以上に「捨」を大事にするから、その部分だけに焦点を当てて見ればそりゃ「頑固な野郎だ」ってことにもなる。でも、もう少し離れた場所から、俺の動き全体を見てもらえれば、俺が他の人たちよりもずっと柔軟な奴だという事が分かってもらえると思う。
つまり、やはり、俺はバタフライだ。意味もなく同じ花に止まってるなんてことはありえない。閃きに任せて選んだ花ではあっても、選択が間違っていることに気付いたら、あるいは蜜を吸い尽くしたことに気付いたら、即座に別の花を探して飛んでいく。あのやり方をやめたのも、あの場所を去ったのも、全てそういうこと。
ただ、いかんせん飛び方がね。ツバメみたいにスマートなら良いんだけど、迷い箸みたいな飛び方しかできないから、目的地に辿り着くまでめちゃくちゃ時間がかかるんだな。
迷い箸みたいな飛び方してる奴のどこがどう頑固なんだろう。