⬆︎本田純正氏の運転する自転車の後部座席に乗って颯爽と取材現場に現れた和田怜士。
何か異質なものをと考えていた
Q 怜士さん、この度は弊誌スタッフ限定の新曲試聴会を催して頂きありがとうございます。
A いやいや、君んとこにはいつもお世話になってるからね。僅かに3曲とはいえ誰かに聴いて欲しかったし。で、どうだった?
Q 三者三様。それぞれに個性があり、また、それぞれにこれまでの怜士さんにはなかった要素があって驚きました。
A そうか、良かった。
Q では、新曲についていくつか質問させて頂きますので、お答え願えますか?
A もちろんだ。
Q まずは『俺はロックスタア』から。怜士さんにしては珍しくアッパーでストレートなパンクナンバーです。
A グリーン・デイの1st(『ドゥーキー』)に収録されててもおかしくない感じだろ?リフものって俺、あんまり作らないから珍しいといえば珍しいかな。
Q この曲の原型はバンド時代にはすでにあったんですよね?
A そう。その時のタイトルは「僕はフィクション」。でも、ライブではほとんどやらなかった。アンコールでたまにやったくらいで。シンプル過ぎてかサラッと流れてしまう感じがあって、曲として惜しいなとずっと思ってた。
Q で、今回手直しされたと。
A そう、新たにメロディーと歌詞を付け加えた。それから、一番変わったのは何と言っても…
Q 中盤で突然飛び出すスカビートですね!これには驚きました。
A 佐野(元春)さんの曲に『インディビジュアリスト』ってのがあって、これが強烈なスカで、ライブで観て「俺もこれやりたい!」って(笑)
Q で、思い切って導入してみたわけですね?
A そう。曲がサラッと流れてしまわないように中盤に何か異質なものをと考えていたんだけど、そこにスカがはまったんだ。そもそも、俺の中にスカはない。全く聴いてこなかった。だから異質も異質。でも、不思議と違和感は感じないだろ?調子に乗って、ライブではこの部分を長めにやってやろうと思ってる。曲の尺を無視して(笑)
これまでもこれからもあいつらに期待するものは何もない
Q 次の曲は『WHY?』ですが、これってなんだかもうヤバくないですか?
A ヤバいとは?
Q 怜士さんのバラードの中でも屈指の名曲だと思うんですよ。
A ありがとう。俺もそう思ってるよ。メロディーがもう完全に洋楽で…そう、UKだね。おそらく、俺の曲の中でも最もスローなものに仕上がると思う。可能な限りスピードを落としてじっくり歌い上げる。そんなタイプの曲だね。真面目な女性ヴォーカリスト。そうだな。例えばそれこそみこみかんさんみたいな人に感情を込めて歌ってもらえたら素晴らしいんじゃないかな。
Q 歌詞に登場する「堕ちてゆく最愛の人」は音楽の事を指しているとのことですが、音楽は今後も堕ちてゆくとお考えですか?
A 俺も音楽やってる人間だからね、そこんところをなんとかしたいと常日頃思ってるよ。微力ながら音楽を救い上げる手助けをしたいってね。でも、悔しいけど、現実的には厳しいね。だって、この曲をどんな世界に送り出すのかというと、「世界で一つだけの花」みたいなのを名曲だなんて言ってる人たちが暮らす世界に送り出すわけだよね。でも、あいつらにこれを理解できるわけがないし、これまでもこれからもあいつらに期待するものは何もない。君が言うようにこの曲が名曲だとしても、だからどうしたというね。絶望的だよ。この曲全体に漂っている悲愴感は、つまり、そういうことなんだ。
滅茶苦茶な奴がいたって良いじゃないか
Q では最新曲となる3曲目『悪魔と呼んで』ですが、こちらは一転して突き抜けるようなカントリー調の曲に仕上がっています。カントリーは以前からお好きだったんですか?
A 大嫌い。
Q え?
A だってアメリカ発祥の音楽だよ?ロクなもんじゃない。
Q (笑)
A カントリー調ってのはあくまで結果論であって、最初から「カントリーを作るぞ!」なんて思ってたわけじゃない。そんなもの、作りたかないよ。ただ、この曲はメロディーと歌詞の大半が同時に出来てね、出来たものに捻りを加えずにストレートにいこうと決めたらカントリー調になったというだけの話なんだ。
Q 確かにいつになくストレートですね。緩急がなくて転調することもない。メロディーも至ってシンプルで、高いテンションを保ったまま駆け抜ける感じです。
A そう。緩急がない。俺にとっては初の試みで新鮮に感じた。いつもやってることをやらないっていう、ただそれだけのことで曲って化けるもんなんだなと、また一つ勉強したよ。
Q 歌詞についてはいかがですか?
A 思いのほか苦労した。でも、結果的には面白いものになった。これは頭のぶっ飛んだ芸術家の話なんだ。ロマンチストが過ぎて赤い口紅さえあれば死んだ「君」を生き返らせることができると思っていたり、楽天家が過ぎて人生には山だけがあって谷はないと考えていたり、希望的観測が過ぎて人生や幸せには始まりだけがあって終わりがないと信じていたり…滅茶苦茶なんだ。で、俺は彼のそんな滅茶苦茶感を吹けないハーモニカで乱暴に表現してみせるつもりで、たまにはそんな滅茶苦茶な奴がいたって良いじゃないかと思っていて、もしそんな奴がいるとすればそれは芸術家以外にないな…という、そんな曲なんだよ。
Q つまり、「山だけがあって谷はない」というフレーズが緩急のないアレンジとリンクしていて、主人公である芸術家の頭の中のカオスとクレイジーなハーモニカがリンクしていて…渾然一体となっているわけですね?
A そう!その通り!いいね、そういうことにしておこう(笑)
Q 次回公演では3曲とも披露されるんですか?
A もちろんそのつもりだよ。あくまで予定だけどね。4月になりそうだ。本当はその前にもう一本やりたかったんだけどしょうがない。需要を感じないし、昔のようにはライブというものを信用してないし、自分を安売りするのはゴメンだ。いつも言うようだけど、ただ楽しいってだけじゃやる意味ないんだよ。でも、4月は全力でやる。できれば、セットリストの半分は新曲でいきたい。だから、あと1、2曲は作らないとな。
Q どんな曲になりそうですか?
A さあね。自分でもわからない。何が出てくるんだろうね。ガチャガチャみたいなものだからね(笑)
「WHY?」はバラッドなんですね。あ、いやバラードなんですね。
またバラードが聴けるのですね。新曲で。
実は「紙吹雪舞う」と「モナリザ」のファンでして
別口のバラードだと思いますが、楽しみにしてます。
「人間の羽根〜ヒトノハネ〜」「ザ・ラヴリミナル」「ノエル」等、最近全くやっていないバラードはまだまだあるんですよ。
「モナリザ」が好きなら「WHY?」は絶対気に入ってもらえると思います。「空回りしている音楽への愛情」というテーマが共通してますから。
お楽しみに!