コンセプトアルバム作り方講座

今年はライブをやるにしても5月以降になる。なので、音源の制作や見直しをする時間が十分にある。

一般的に、「良い音」というのは分離の良いクリアな音のことを指す。それはまあそれで良い。特に異論はない。何でもかんでも異論を唱えれば良いというものでもない。が、「好きな音」となると話は別で、クリアだから好きとは限らない。現に俺はデジタルな音よりアナログな音が好きだし、理路整然と作り込まれた冷たい音よりも粗雑で体温の感じられる音の方に想像力を掻き立てられる。粗雑で体温の感じられる音…長らくリリースが先送りとなっている俺のアルバム『爆弾』はまさにその金字塔で、さらに言えば、アコギ一本でこの音というのは下手をすれば音楽史上初かもしれない。

タイトルを『爆弾』としたのは、単純に、爆弾のような音だと思ったからである。爆音過ぎて音が割れ倒している。一般的なリスナーは「音が悪い」と言って拒絶するに違いないが、俺はこの音が好き。シスターマロンが「村八分のライブ盤みたいな音」と言っていたが、言われてみれば確かに、村八分の「発掘された」音に近い…ん?村八分のライブ盤みたいな音?

面白いアイデアが浮かんだ。

『爆弾』の特徴は、音からの情報だけでは、いつ、どういった環境で録られたのものなのかを察することができないということにある。実際には、2017年に大阪の扇町para-diceという地下にある非常に狭いライブハウスで録られたものなのだが、2017年であることも、地下の狭い空間であることも、音を聴いただけではわからない。なので、それを逆手にとって、唯一、近年の録音であることがわかるアルバム冒頭の「introduction」(会場で流れていたディスコ的なBGM)をカットして、さらに封入カードから「扇町para-dice」の表記を消してしまえば…面白いことになる。

まず、村八分の発掘盤を調べたところ、1972年のライブとあったので、『爆弾』を「1972年のライブ盤」という設定にしてはどうだろうと考えた。が、さすがに1972年を名乗るほど古い音ではないし、1972年という年に特別な思い入れがあるわけでもないので却下。そこで思い付いたのが俺が生まれた1977年のライブという設定である。「1977年1月31日に行われたライブの模様を収めたアルバム」ということにすれば、「俺は俺が生まれた日にステージに立っていた」もしくは「生まれてすぐにステージに立っていた」という奇怪な、アングラ臭漂うコンセプトが浮かび上がってくる。

「いつ」が決まったら、次は「どこで」を設定せねばならんが、これはすぐに閃いた。大阪の寺田町にあったとされる伝説のライブハウス『乱気流』である。もちろん、架空。

1977年(昭和52年)1月31日、伝説のライブハウス「乱気流」で行われたライブの発掘音源。

こうなるとジャケットはこうなる。これがコンセプトと音とを結び付ける。

ちなみに、参考にしたのはコレ。

帯の色も、他のアルバムを赤で統一している中で『爆弾』だけモノクロにする。封入カードも、コンセプトに合わせて一から作り直す。

というわけで、『爆弾』がコンセプトアルバムとして生まれ変わる。想像力の有無で聴こえ方が違ってくる。

imagineじゃないが、「想像してごらん」だ。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。