サグラダ・ファミリア。1882年竣工。今だに完成していない巨大な建造物である。技術の進歩で2026年の完成が予想されている(コロナの影響で無理っぽい)が、80年代までは完成までに300年かかると言われていた。で、ここまで壮大な構想ともなると面白いことが起こる。建設と修復を同時にやらねばならんのである。新しいところを作っている尻から過去に作ったところが劣化していく。前だけを見て突き進めれば良いがそうはいかない。ちょいちょい振り返ったり戻ったりせねばならんのである。
ところで俺、現時点でオリジナルが55曲ある。目下60を目指して、果ては100を目指して、新しいのをじゃんじゃん作っていきたいところではあるが、50を超えたあたりから俺の中にサグラダ・ファミリアが出現した。つまり、建設だけではなく修復も同時にやらねばならないという、一進一退の様相を呈してきた。
曲を作り始めて二十余年。有り難いことに作曲能力は向上し続けている。新曲を作るたびにキャリアハイを更新しているという実感があって、今はまだ歯痒くも自称天才だが、そのうちわざわざ自称する必要もなくなるだろうと踏んでいる。そのためにはさらに作らねばならない。さらにキャリアハイを更新して見せねばならない。しかしながらサグラダ・ファミリア。作曲能力の向上が過去の曲に伸びしろが残されていることへの気付きに繋がって、これをまず何とかせねば先へ進めないような気がするのである。
50曲に満たないうちは1曲1曲別々に、曲単位で見ておれば良かった。1曲1曲が建造物でそれぞれ独立したものだと思っていたから、離れたところから全体を見たりはしなかった。それが今は自分の中に一つ、大きな建造物があるから、1曲1曲をその一部だと捉えるようになった。全体を見て、新しい曲をどうするか、過去の曲をどうするか、考えるようになった。足りないものは新たに作るし、新たに作ったものと比べて見劣りするものは破棄して一から作り直すか修復するかする。それぞれがそれぞれに何らかの役割を担いながら、一つの形を形成しているのである。
俺の中のサグラダ・ファミリア。今後の建設計画を立てるためにも、現時点でどんな形をしているのかをできる限り具体的に把握したい。となるとやはりミニチュアの模型が有効で、この模型の役割を担うのが今度発表する予定のベスト盤なのである。