命名の儀

俺は必ず自分の楽器に名前を付ける。俄然、愛着が湧くからである。当然、今回手に入れたエレクトリック・ギターにも名前を付けた。正式な名称は「ギブソンES-335」で、皆、「ES-335」と呼ぶが、それではただの楽器だ。魂が宿っていない。だから、人間と同じように名前を付けてやらねばならない。

楽器に名前を付ける時、考え過ぎは禁物だ。変にこねくり回すとそれはそれで愛着が湧きづらくなる。シンプル・イズ・ベスト・イズ・ベストだ。というわけで、今回、「彼女」にどんな名前を付けたのか。発表しよう。

彼女は桜の開花とともにやって来た。そして、俺の中に「頼むから雨女だけにはならないでくれ」という祈りがあって、桜が咲くと人は皆、雨が降らないことを願う。なので、「さくら」と命名することにしたのだが、彼女はアメリカ生まれなので、アルファベット表記で「SAKURA」とした。

魔女SAKURA。

ここで一つ気付いたことがある。「魔女」と「SAKURA」が馴染まず分離してしまっている。これは何を意味するのか。そう、SAKURAは魔女ではないということである。悪魔的な魅力を備えており、魔術的な力を秘めてはいるが魔女ではない。では一体何者なのか。少し考えて分かった。彼女は、SAKURAは、花魁(おいらん)だったのである。その証拠に…

花魁SAKURA

「花魁」と「SAKURA」が見事に馴染んで融合している。そういえば、白いペグが簪(かんざし)に見える。

そうか、お前は花魁だったのか!ということは、俺は花魁を連れて歩く男というわけだ。これほど男冥利に尽きることが他にあろうか。そうか!そうか!そうだったのか!あはははは!

というわけで、花魁SAKURA。以後、お見知り置きを。


2件のコメント

    1. 日本の歴史上、ロックスターと呼べるのは花魁だけだと思います。そこに桜の「桜の下に死体を埋めると血を吸って赤く染まる」といった類の伝承のムードを絡めて味わうと…文句ナシ。完璧です!

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