先日、ある人が笑いながら「喋らんのが一番です」と言った。
言いたいことが言えない。窮屈だ。というのは子供の頃から思っていた。最近はそこに輪をかけて、やれパワハラだ、モラハラだと、○○ハラというのが我が物顔に幅を利かせてさらに窮屈な世の中になった。
「傷ついた」という言葉をよく聞く。どいつもこいつもすぐ傷つく。そんなんでよく今まで生きてこれたなと思う。これからどうやって生きていくんだ?と思う。繊細が聞いて呆れる。ただ弱いだけじゃないか。
何でもかんでも除菌だ抗菌だと言ってるうちに人は菌に対する抵抗力を失って弱くなった。同様に人は、あれは暴言だ、それは失言だ、あれは言ってはいけない、それも言ってはいけないと言っているうちに言葉に呑まれて、言葉を使うのではなく言葉に使われて、言葉の手の平の上でわちゃわちゃ喚き散らしながら踊る臆病な人形に成り下がってしまった。
何も言えない。
マスクをせずに歩いていると冷たい目が飛んでくる…という状況はいつか終わるだろうけど、見えないマスクをせずに生きていると白い目に晒されるという不条理は永遠に終わらないだろうと思う。