皆さんよくご存知の通り、俺はものの好き嫌いをはっきり言う。が、元々そういう人間だったのかといえばそうではない。自己矯正とも言える意識的な取り組みを経て、最近ようやく馴染んできたというか、習慣付いてきたのである。
好き嫌いをはっきり言うことにした目的は、好き嫌いのはっきり言える人間になりたかったからではない。好き嫌いをはっきり言えるということ自体にはさほど意味はないと思っている。目的は別にある。それは、YES/NOのはっきり言える人間になりたいということである。
YES/NOをはっきり言うことと、好き嫌いをはっきり言うことのどちらが難しいかといえば、言わずもがなYES/NOをはっきり言うことである。日本人の性か、本当に難しい。いきなりYES/NOのはっきり言える人間を目指すというのは、最初から補助輪のない自転車に乗るようなもので、大怪我をしかねない。まずは補助輪を付けて練習しなければ。で、その補助輪の付いた自転車に乗ることに当たるのが好き嫌いをはっきり言うことだと思っている。もちろん、リスクは伴なう。補助輪が付いていたってコケる時はコケる。が、鈍臭いことにドブにはまるとか、不運なことに車に轢かれるとかしない限り、大怪我は免れる。そうして、ちょいちょい擦り傷程度の負傷をしながら練習して、自分の中で補助輪に頼る気持ちが消失する日を待つ。
YES/NOがはっきり言えたら好き嫌いをはっきり言うなんてのは容易いことに違いないのだが、好き嫌いがはっきり言えたとてYES/NOがはっきり言えるとは限らない。しかしながら、好き嫌いすらはっきり言えない有り様ではいつまで経ってもYES/NOをはっきり言える人間にはなれないから、まずは好き嫌いくらいはっきり言える人間になって、そこから、不思議と以前ほど高嶺の花だとは感じなくなったYES/NOのはっきり言える自分に手を伸ばすべきである。
と、エラそうに言いながら、俺もまだまだ好き嫌いをはっきり言うので精一杯の段階。でも、何かしら見えてきたものがないわけではない。「攻撃は最大の防御なり」と言うが、好き嫌いをはっきり言うようにしてから、ただそれだけのことで、メンタル的に常にファイティング・ポーズをとれているような気がして、差し込むことはあっても差し込まれることがなくなった。少なくとも、YES/NOをはっきり言える自分への仮免許くらいは取得できたんじゃないかと思っている。