実話〜緊張と緩和からの緊張〜

以前、眼診というのを受けたことがある。眼科を受診したということではない。目を見て、覗き込んで、その人の性格を診るという、いわば手相占いの眼球版である。で、その時、眼診師に言われたのが「あなたは何より窮屈であることを嫌います」だった。「例えば、あなたにとっては車ですらただの鉄の塊でしかありませんから、乗っていて窮屈だと感じておられるはずです」とも言われて深く恐れ入った。仰る通り。なぜ目を見ただけでそんなことまでわかるのか。

ところで、マスクが嫌いだ。この御時世、仕方ないからしてるけど、本当は大嫌い。子供の頃から大嫌い。メガネが曇るとか、呼吸がしづらいとか、見た目的に嫌だとかそういうことじゃなくて、窮屈だから嫌い。だから、コロナが流行してからというもの、日々、耐え難きを耐え忍び難きを忍んでいる。眼診師が言ったように、俺にとって窮屈は天敵だ。マスクなんかしてたんじゃ運気のようなものすら下がっていくような気がする。実は結構気が気でない。ところが、一日に一度だけ、コロナの意味を考える時の角度が変わる一瞬というか、マスクに有り難み…こそ感じないけど、マスクのおかげで幸福感のようなものを感じる一瞬がある。

仕事帰り。コンビニでビールを買って、人気のない道を歩く。その道を歩くのは、時間にして僅かに3分くらいだけど、道の始点でビールの栓を開けてバッとマスクをはずす。この瞬間が至福の瞬間なのである。もちろん、マスクから解放されたことの喜びもある。でも、それ以上に感動的なのは空気の美味さなのだ。植物の匂い、土や砂の匂い、夕食の支度をしている民家から漂ってくる匂い。ありとあらゆる平和な匂いが渾然一体となって怒涛の如くに流れ込んでくる。で、俺は思う。昨日も思ったのに今日も思う。外の空気ってこんなに美味かったんや!知らんかった!なんだかんだで平和やないか!LOVE&PEACE!

と、そこへ、ミリタリー柄の服を身に纏った明らかに頭のおかしな野郎がキエエエエエエエエ!と奇声をあげて民家の裏庭、野菜やなんかが植っているところから突如現れてモデルガンで俺を撃ってきたのである。

当たらんかったけど…。


6件のコメント

    1. ドランクドラゴンの鈴木みたいな顔をした奴でした。俺が振り返って睨み付けると、笑いながらずっと「キィィィィ!」ってゆうてました。

      LOVE&PEACE。

  1. モデルガンの男がわてやったら
    最大限の恐怖だっとのではないかな。
    POLICEに取り押さえられて、おしまいでござる。

    1. モデルガン…だったと思います。

      撃たれて、パン!っていう音が聞こえた時、一瞬、「俺はレノンか!」と思いました(笑)

  2. 眼診の先生は、「男の中の男」という感じの方です。とも仰っていました。

    1. 確かにそんなことも言ってましたねぇ。でも、どこの世界に雷が鳴ると震え上がって家から一歩も出なくなる男の中の男がおりましょうか(笑)

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