仕事でヘアキャッチャーという物を扱っている。お風呂の排水口に設置して、髪の毛等のゴミが配管に流れていかないようにする為の金属製の網。家庭でもよく見かけるあれのデカいやつを扱っているのだが、長年扱っている内に気付いたのは、ゴミは突然大量に溜まるものではないという事。ではどうやって溜まるのか。最初はごくごく小さなゴミ。それこそ一本の髪の毛から始まって、そこに後から来たゴミが絡みついていく形で増えていくのである。そうやって、ゴミが増えたらどうなるか。当然、水の流れが悪くなって排水が利かなくなってくる。
人生にも流れがある。この流れも急転直下、ある日突然悪くなるというものではないような気がする。おそらく、最初は実に些細な事。「これくらい良いだろう」と考えてしまうようなちょっとした悪事。ずるい事をしたり嘘をついたりする事から始まって、そこから加速度的に悪くなってしまうんだろうと思う。つまりは自業自得。
そんなわけで、最近、愚直な人間でいたいと思うようになった。ズル賢さを放棄して回り道を厭わない、側から見れば救い難く不器用な人間。ただ、ブレる事のない信念がドーンとあって、真っ直ぐで清々しい。そんな人間でいたいと強く思うようになった。
ズル賢さは近道をする為にある。でも、ズル賢い人間の思考回路は複雑に入り組んでいて、迷路のようになっている。ズル賢い人間はこの迷路を生きる。一方、愚直な人間はいちいち回り道をしているように見えるが、彼の中にあるのは信念に沿って伸びる真っ直ぐな道。彼はこの道を往く。だから、昔から「急がば回れ」と言う。
ぐるっと真っ直ぐ我が道を往こう。