物販廃止の理由

店頭に魚が並んでいる。

並んでいる魚が新鮮で美味そうに見える時、我々はその魚が死んでいるとは認識しない。ところが、並んでいる魚に鮮度を感じることができず、不味そうに見えた場合には、その魚が死んでいると認識する。美味かろうが不味かろうが死んでいることに変わりはないんだけど、美味そうに見えるか不味そうに見えるかによって、人間の認識というものはこんなにも変わってくる。

私が、自分の音源を販売しないことに決めたのは、ライヴハウスの物販席に並んでいるCDがことごとく死んだ魚に見えるようになったからだ。

ライヴ前に物販席に並べた音源が、ライヴ後、販売する頃にはなんだかもう埃を被った感じになっちゃってて、絶望的な鮮度の落ち方をしている。だから手渡しで、受け取る人に鮮度を感じてもらいたいと考えるようになった。

物を見た人が、それがそこにあることを認識してから受け取るまでの時間が短ければ短いほどいい。となると、お金をやり取りする時間だって無駄で、省くに越したことはないし、そもそも、そんな目先の利益なんてどうでもいいし、考えてないから、販売することをやめた。

これまで、販売の形をとってきたのは、受け取る側としてもお金を払って手に入れた方が手に入れた実感があって良いかなと思っていたから。でも、それは間違いだった。大事なのは、「自分と相手の接点として音楽がある」ということで、それが全てで、そこに焦点を絞るべき。

だいたい、ロックスターが二つ折りの財布から100円玉を取り出して「はい、お釣り」なんて、絶対やったらアカンことよな。


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