潔さで拓く道

ライヴやってると、色々な人から色々な言葉を頂戴する。全て大事にしてるけど、特に印象に残っているのが、thanのギター・ヴォーカル、キタさんから頂戴した「潔い!」という言葉。簡潔な言葉だけどズドンときて、他の人になくて自分にはある「売り」にすべきものって、まさにその「潔さ」なのかも知れないと考えるようになった。発言も行動も潔くいきたい。

ところで、自分はこれまで12枚の音源を制作してきた。基本的には、スタジオ盤が作品で、ライヴ盤は記録だと捉えてきた。でも、最新ライヴ盤『ROCK&REISHI』(以下『R&R』)を作ってからというもの、捉え方がガラリと変わった。これまでの12枚については、スタジオ盤が記録で、ライヴ盤が作品なのだ。そして、もっと言えば、私自身、胸を張って作品だと言えるのは『R&R』のみ。

私は10回目のライヴで、自分でも予期せず、突然化けた。『R&R』はその瞬間をパッケージしたもの。過去9回のライヴと11枚の音源はこれに辿り着く為にあった。聴けばわかる。私の声も、ギターの音も、セットリストの組み方も、お客さんの反応も、全てが違う。だから、過去11枚の音源を全て廃盤にして、「ブートレッグ・プロジェクト」に幕を下ろすことにした(先日気付いたのだが、『R&R』のジャケットには、内ジャケを含めて「bootleg」の表記がない。自分でも不思議なのだが、これに限って表記し忘れたのだ)。「もったいない」という声もあるかもしれないが、アーティストにとって「もったいない」という概念ほど無駄なものはないーということを親父から教わった。陶芸家が納得のいかない壺を次々と割っていく。あの陶芸家の気持ちを汲めないようではアーティストとは言えないのだ。

今後、私は、スピーカーから血が吹き出してくるようなライヴ音源のみを「作品」として発表していく。スタジオ盤はサポートメンバーを調達することができたら制作する。音源の発表方法についても、これまでのやり方をやめる。物販を設けない。つまり、販売しない。あげる。私が聴いて欲しいと思った人や、ライヴの後、私に話しかけてきてくれたお客さんにあげる。お客さんにとって、出演者に声をかけるのはめちゃくちゃ勇気のいることだから、その勇気と引き換えに、喜んで、あげる。

過去11枚の音源については、「ま、いつでも買えるだろう」などとたかをくくっていた人はご愁傷様。もう二度と手に入らない。買ってくれた人たちは、私としても決して間違ったものを作った覚えはないし、たまに引っ張り出してきて聴いて、保管しておいて欲しい。いつか「家宝」と呼んでもらえるように精進しまっさかいにな!


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