「言いたい事はちゃんと言い合える仲でいましょう。ね?」などという言葉は、私にとっては、ただの無茶振りである。
「そりゃまあ、あんたにはそれができるでしょうが、私にそれを求められても、それは無理というものです。」という気持ちを断腸の思いで噛み締めつつ、私はただ曖昧に笑うだけである。
そこへもってきて、何か姿勢的に、私に対して一歩引いたような接し方をしてくれる人というのは、本当に有難い。
私が何も言わなくても、私には実は強烈な主義主張が、意志があるんだということを無意識の内に察してくれていて、その部分に対して、畏敬の念みたいなものを常に持ってくれていて、「これ以上は踏み込まないよ。」という一線を引いてくれている人というのは、人間として、本当に尊敬に値する、『愚鈍』の真逆をいく人間だと思うから、私としても、彼らに対しては常に畏敬の念を忘れないので、これは、お互いがお互いに無理なく、無理させず、思いやり合って成り立たせている人間関係なので、本当に綺麗な、品のある、人間関係の形だと思う。
♪友達はいいもんだあ〜、言いたいことが言えるんだあ〜。なんて歌を、子供の頃、学校で歌わされた記憶があるが、こんな言葉は完全な嘘である。
私は、私の友人達が、私に対して言いたいことを言っているとは思わないし、彼らもまた、私が彼らに対して、言いたいことを言っているとは思ってはいないだろう。
ただ、お互いに、お互いの中に、蠢く何かがあることを、敏感に察し合えている。これは、実に大人な人間関係だと思うし、私は、こういった関係には、本当に恵まれていると思い、この点については、日々、黙々と感謝している。