高校の時、私は本気で「日本の音楽を助けたる」と思っていた。思うだけではなく、同級生相手に声に出して言っていた。「日本の音楽は死んでる。死んでる音楽を聴いて喜んでる日本人の耳は腐ってる。だから俺が助けたる」と言っていた。近所に、有名な精神病院があった。そして、それから10年後、私は『モナリザ』という曲を書き、「救いの手 言葉で求めて メロディーで差し伸べて」という歌詞を書いた。これは、そっくりそのまま音楽に対する言葉で、『モナリザ』という曲自体が音楽を「モナリザを気取るしか能のない女」に例えて、「助けたるから助けてくれ」と訴えている曲だった。 曲の後半には「血も涙もない君の力を信じてる」という言葉も出てきて、当時やっていたバンドの解散の兆しを感じながら歌っていた時には、涙が出てくることもあった。
今もなお、弄ばれるだけ弄ばれてグチャグチャになった己の醜さに気付かず、自分を助けようとした人間を助けようとしなかったことへの反省の色も無く、黙って薄ら笑いを浮かべているだけの非常に無慈悲な女ではありますが、私もまた彼女に負けず劣らず性懲りなく、いま一度「助けたる」の精神に立ち返って、救い難き片想いの炎に巻かれて果ててやろうと思っております。