変身

通勤途中で毎朝のように見かける光景があった。

大人に手を引かれて登校している赤いランドセルを背負った小学生の女の子がいた。

おそらく学年の割には背の高い、痩せた、少し色黒の、髪を左右に束ねた地味な女の子だった。

女の子は学校に行くのが嫌で嫌で、大人の手を振りほどこうとしながら、道に座り込む勢いで抵抗して、泣きじゃくっていた。

いつも、ランドセルにぶら下げた給食袋が激しく揺れていて、それが切な過ぎて、見るに耐えなかった。

大人は親だったり、近隣の人だったりするらしかったが、いずれにせよ悲壮な表情を浮かべていた。

痛い光景だった。すれ違いざま、「そこまでして連れていかなあかんか?」と思うこと度々だった。

先日、その女の子がいつもの時間にいつもの場所をランドセルを背負ってこちらに向かって歩いてきた。

まるで別人。女の子の傍らに大人の姿はなく、表情はキリッと凛々しくて、足取りもたくましかった。

何があったのかは知る由もないが、物凄く良いものを見たと思った。

心の中で「立派やぞ!カッチョええぞ!」と叫んで、ちょっと泣きそうになった。


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