沈黙の理由

ライブハウスは音楽のみが売りなので、音響や照明に色々と注文を付けることができる。だから、音響や照明の世話をしてくれることに対して演者がお金=出演料を払うのは当然の事だと考える。だがしかし、例えば梅田のあるライブハウスだと、僅か30分の持ち時間に対して出演料が20000円もする。その点、ライブバーは音楽のみを売りにしているわけではないので、音響や照明については目を瞑るより他ないが、代わりに出演料がタダだったり、タダ同然だったりする。また、音楽のみを売りにしているライブハウスには(その鑑定眼が信用に値するものかどうかは別として)演者に対する厳しさがあり、終演後の精算時にダメ出しをされることもあるが、ライブバーにはこれがない。

ライブハウスが「闘いの場」であるのに対して、ライブバーは「社交の場」

普通に考えれば、身銭を切って闘っている演者のレベルの方が身銭を切らずに仲良しごっこを楽しんでいる演者よりも高そうなものだし、本来、そうあるべきなのだが、実際には大したレベルの差はない。ライブハウスにもゴミはわんさかいるし、ライブバーにも凄い人がたまにいる。

ところで、先述の梅田のライブハウスに話を戻すが、このライブハウス、チケットが前売りでも2000円する。1ドリンク別だから2500円ということになる。他によほど気になるのがいない限りは目当てのアーティストだけを観るとして、僅か30分のライブに2500円は高過ぎる。例えばこれが2時間のライブだとして換算すると10000円。これはかなりビッグな海外のバンドが来日公演する時のチケット代に相当する。さらに、これが前売りではなく当日だと500円増しで3000円。2時間に換算すると12000円!マッカートニーやストーンズじゃないんだからありえない。もし、これを相場だと、当たり前だと言うのなら、ライブハウスなど片っ端から潰れてしまえばよろしい。と、ここで、ライブバーの逆襲が始まる。

ライブバーだと、500円〜1000円のチャージを払うだけで入場できる。また、音響や照明についての配慮が、基本的に、演者の美意識よりもお客さんの居心地の良さに対して払われているので、ステージ上にいるのが目当ての演者ではなく、箸にも棒にもかからない演者である場合には連れと談笑してスルーすることができるし、ライブハウスと違って酒だけではなく料理を出してくれる店も多いから、ライブを観てああだこうだ言いながら腹を満たすこともできる。

好きなアーティストのライブを観に行くために一日休みを取る。ライブハウスに行って3000円払って30分で帰るのか、ライブバーに行って500円払ってのんびり過ごすのか。

俺としては、多少の身銭を切っても、自分の思う音と照明で演りたいと思う。それに、ロックであることにこだわりを持ってやってる以上は闘いたい。勝った時は勝ちに酔い痴れて、滅多にないけど負けた時は潔く負けを認めて…というのが楽しい。でも、わざわざ仕事を休んで、もしくは仕事の後に、遠路はるばる足を運んでくれるお客さんの立場になって考えてみると、やり方を見直す必要があるような気がしてくる。

もし、俺のライブに売りがあるとすれば、「ギリギリ感」だと思う。じゃ、そのギリギリ感はどこから来てるんだと言うと闘争心から来ているんだと思う。「勝ち負けの問題じゃないだろう」って言う人もあるし、実際に言われたこともあるけど、それはライブをエンターテイメントとして捉えているのか格闘技として捉えているのかの違いだと思う。言わずもがな、俺は後者だから、勝負にとことんこだわって、その我武者羅な姿で魅せたいと思う。目の前の相手を倒すことよりも客ウケを考えてるボクサーなんていないし、いたら嫌だろう。だから、俺のライブにはMCがない。

ライブハウスとライブバー。あちらを立てればこちらが立たずの一長一短。社交の場に闘争心を持ち込めば間違いなく浮く。そして、マナー違反だとばかり、他の演者に嫌われる。まあ、身近な所ではもう十分嫌われてるし、さらに嫌われたところでびた一文ヘコまないから別に構やしないんだけど、ヘコむことはなくても「このファッキンふにゃチン野郎どもが!」ってイライライライラして、イライラすることに猛烈に疲れるから面倒臭い。くだらないものはくだらない。「良かったですぅ」なんて心にも無いことを軽薄に、俺、口が裂けても言わないし。

でも、ね、まだほんの数人とはいえ、俺の音楽を気に入ってくれていて、毎回のようにライブを観に来てくれる人たちのことを最優先に考えるべきなのは確かなこと。そこで、今のところ、俺の中に一つのアイデアとして、僅か30分の為にライブハウスに高い金払うくらいなら、ライブバーを安くで借りてイベントを組むなどして1時間歌った方がよっぽど良いんじゃないか?というのがあったりする。

嗚呼、こうなったらもう納得いくまでとことん迷って、俺らしいベストな道を見つけるより他あるまい!


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。