ただのバインダーにあらず

介護士だった時、何が嫌って夜勤が嫌だった。何十人もの老人を一人で見るんだから、怖くて仕方なかった。

何が起こるかわからない。認知症の人はウロウロ歩き回るし、暗闇の中、エレベーターホールでお爺さんが頭から血を流して倒れていたこともあったし、看取りをしたことも一度や二度ではない。

とにかく怖かった。なので、その怖さに打ち克つべく、夜勤の時に使っていたのがこのバインダーである。ステッカーが剥がれてくるたびにセロテープで修繕した。感慨深い一品である。

現在は歌詞を書く時に使用している。バインダーなんて百均でいくらでも売っているが、買い換える気になれない。これを使えば浮かばない言葉も浮かんでくるからである。


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