ソロで活動を再開し、ライブバーに出入りするようになってまず驚いたのは、他演者達のダサさであった。どいつもこいつも四畳半フォークとサザンしか知らないように思え、その絶望的な勉強不足に怒りすら覚えた。
彼らのスタイルは「弾き語り」と呼ばれており、一人でギターを弾きながら歌う者は皆、その範疇に組み込まれるらしかったが、俺としてはそれだけは死んでも嫌だったので、UKロック好きを前面に押し出すことで拒絶、差別化を図った。その象徴が「バタフライ」に引き続き、この映像でも登場するユニオンジャックだったのである。
使用しているギターはスタジオで借りた古いヤマハのギター。音が気に入って使用したのだが、ストラップが救い難くダサかった。必死にはずそうと試みたのだが、ヘッドの所にガチガチにだんご結びしてあってはずれない。隠そうとしても演奏しているうちに出てきて画面に映り込んでしまう。そこで思い付いたのが映像の照度を強くすることだった。年配の女優が照明でシワを隠す、あの要領で画面上からストラップを「漂白」してしまうことにしたのである。それが結果的に、映像のレトロ感を強めることに繋がった。
個人的にはギターの弾き方が気に入っている。小ぶりなギターである上に、弦を思いっ切り叩かないと音が出なかったからだろう。いつもの弾き方に輪をかけて「弾き語り」の人達には真似の出来ないロックな弾き方になっている。