映像裏話①バタフライ

ライブができなくなって、俺と同じような立場にあるアーティスト達が挙って動画配信し始めた。良いことだと思う。なぜ良いことだと思うのかと言うと、単純に俺がミュージックビデオを観るのが好きだから。昔から、好きなアーティストについてはCDだけではなくビデオやDVDも買ってきたし、今でも、映画はほとんど観ないけど、ミュージックビデオはしょっちゅう観る。だから最近、Facebook等で身近なアーティスト達が動画をアップするたびに「お!」と思って喜んで観ている。一見、ただ撮っただけのように見えるし、本人も「ただ撮っただけです」みたいなことを言ってるけど、自撮りだけに、アングルとか背景とかにその人の美意識が滲み出ていて面白い。で、色々なアーティストの映像を観ているうちに、俺も自分が今配信している10本の映像について書きたくなってきた。ライブができない今、動画の持つ意味って馬鹿にできないと思うし、それぞれの映像に裏話的なものがあるから、それを書くことで、日頃放置しがちな映像に光を当ててみようと思う。

古いものから順に書いていく。なので、「バタフライ」から。


中3の時、同じクラスにビートルズ馬鹿の友人がいて、毎日のように彼の家に入り浸っていた。彼の部屋の壁には、ビートルズのポスターと一緒にユニオンジャックの大きな布が掛けてあり、俺はいつも「カッコええなあ…」と漏らしていた。

彼は大学を出るとお金を貯めて、長年の夢を叶えた。単身イギリスへ渡り、ビートルズの故郷リヴァプールを旅したのである。帰国後、旅の報告をしに来た彼は、リヴァプールで買ってきた俺へのお土産を携えており、「昔から欲しい言うてたやろ?」と言って、一枚の大きな布をくれた。その布が映像の背景に掛かっているユニオンジャック。リヴァプールから海を渡ってやって来た「本物」のユニオンジャックを、記念すべき初映像を撮るに当たってスタジオに持ち込んだのである。

一見して俺がUKロック好きであることがわかることから名刺代わりとしても機能してきた、お気に入りの映像である。


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