猛烈な雨に言葉が炙り出されてゆく
煙草を持つ手が震え膝が笑う
何か他の事を考えねばならない
誰か別の人を演じねばならない
誰のせいでもないが
誰かのせいにしたい
忍び寄る約束の時間に
祈りの真似事を嗤い
黒い格子柄の傘
色鮮やかな子供の列に呑まれ
流されてゆく
誰のせいでもないが
誰かのせいにしたい
辿り着くように迷い込み
迷い込むように招かれる
黒い蝶
出入口を塞がれた
白い箱の片隅に転がる
「その黒いのは何だ?」
不意に投げられた
見知らぬ老人の無神経
蝶を恥じ入らせ
焚きつけられた男
一心不乱に踊り
身体を残したまま
魂を解き放つ
誰のせいでもないが
誰かのせいにしたい
猛烈な雨に言葉が炙り出されてゆく
煙草を持つ手が震え膝が笑う
「美しい羽根を泣かせてはいけない」
巧妙に濡れ衣を着せておいて
「誰にも期待するな」と呟いた
誰のせいでもないが
誰かのせいにしたい