影ながら私の文章力をどうにかこうにか支え続けてくれている人のトートバッグを見つけて、年に一度あるかないかの衝動買いをした。
軍服を着た髭面の丸坊主がこのバッグをぶら下げてスーパーで豆腐を買っている画のことを人は「パンク」と呼ぶ。
喋らせようとしてくる
言葉を振り落とすべく
感情を揺さぶりながら
喋らせようとしている
振り落とされた言葉
腐るのを待つリンゴ
誘われるまま
無理に喋れば
墓穴を掘ることになる
なす術なく
重く口を閉ざし
嵐が行くのを待っていた
陽が暮れる。
今、私は、我が家から持ってきたCDを聴きながら、一人でビールを飲んでいる。そしてぼんやり、「俺、文章書くの、好きやなあ」と思った。他人事のように。
そう言えば以前、施設で働いている時、女性職員によく、どうやったら上手く文章が書けるのか?と訊かれた。
私はただ文章を書くのが好きなだけ。決して上手くはないし、はっきり言って下手くそ。痛いほど自覚してる。でも、もし今、同じことを訊かれたら、こう答えるかなと思った。
「口にガムテープを巻いて半年も過ごせばそれなりに書けるようになると思いますよ」
焼鳥屋で夕食を済ませた後、妹さんが行きつけのバーに招待してくれた。
突然フラッとキース・リチャーズが入ってきてもおかしくない雰囲気のバーで、カウンターはほぼ満席。所狭しと広島弁が飛び交い、賑わっていた。
BGMがずっとレゲエだったので、マスターに「ロックンロールはありますか?」と尋ね、リクエストしてみたところ、「ロックンロールはないけど、スカならあります」とのことだったので、スカのCDを回してもらった。
黒ぶちメガネの、少しぽっちゃりとはしているが実に色気のあるマスターが、私の着ている軍服の左肩、蝶のワッペンを見て「ヒッピーみたいですね」と言ったので、「ヒッピー大好きです」と答えた。
ヒッピー。もう随分長いこと口にしていない言葉だが、久しぶりに聞くと実に新鮮で、私に似合う、良い言葉だなと思った。
「あなたは何者ですか?」
「ヒッピーです」
酒と煙草をやり始めた頃、六甲のビートルズ・バーで覚えたジャック・ダニエルのジンジャー割りを4杯飲んだ。なんとも言えない青春の味がして、不思議なことに、全然酔わなかった。