ライナーノーツ『Ⅳ』
<収録曲>
1.妄想狂冥利
19年前、20歳の時に書いた曲。が、その後、納得のいく形になるまでに5年近くかかった。私の中で、私の代名詞的な曲と言えばこれになる。
小学生の時、音楽発表会で演奏した『ミッキーマウスのテーマ』(私の担当楽器はカウベルだった)の中盤、転調する瞬間のスリリングなメロディーがずっと頭にこびり付いていて、離れなくて、そこのところだけ拝借して、軸にして、広げていって、曲にした。
いくつになっても、「もう理解してもらいたいとは思わない」というフレーズは私にとって特別で、歌うたびに、闘争心が湧くと言うか、解放感を感じると言うか…嬉しくなる。
2.ガガーリン
暗黒の大阪時代が暗黒と化す一歩手前の時期に30分かそこらで書き上げた完全未発表曲。メロディー、歌詞とも見直す余地のない出来なのに、今までライヴで演ったことは一度もない。私にしては珍しく「bye-bye my Friend,welcome my star」という英語詞が登場するが、このフレーズが何を意味するのかは私自身わからない。閃いた時から何のこっちゃさっぱりわからなかったのだが、不思議とこれしかないと思ったし、それは今も変わらない。
3.孤高
14、5年前、アルファベッツ時代に書いた曲。二部構成になっていて、キース・リチャーズ的なギターリフで始まるのだが、途中でガラッと転調して、転調して以降はティーンエイジ・ファンクラブみたいになる。我ながらよく出来た、良い曲だと思う。アルファベッツの解散ライヴでラストを飾ったのもこの曲だった。
前半、「君の世界には僕の居場所がない」と歌っておいて、後半、「孤高とはその才能ゆえ おのずと浮いてしまう人を言うのでしょう」と歌う。歌詞についても、我ながら、申し分ない。
<ジャケット>
阪急新伊丹駅。コープの横の、水が出ているのを見たことがない噴水広場で撮影。いつか音源を制作することになったらジャケットに使えるだろうと思って撮影して貰っておいたのだが、まさかこんなに早く使うことになるとは思わなかった。
偶然とはいえ、文字を排除した感じといい、被写体が離れた所にあるカメラを見つめている感じといい、季節感といい、色合いといい、ビートルズの『フォーセール』によく似ていると思っている。
ライナーノーツ『Ⅲ』
<収録曲>
1.女救世主ニーズ
18年程前に書いた曲。メロディーは、今にして思えばどこをどう意識したのかさっぱりわからないが、オアシスの『ロール・ウィズ・イット』を意識して書いた。歌詞は、「女の救世主を創り出してみたい」という気持ちと、「救世主に「人間なんて嫌いだ」と言わせてみたい」という気持ちから書いた。上手く説明できないけど、何度演っても演り尽くした感のない、ミステリアスな曲だと思う。
2.金平糖
7年程前、バンドをやめて、かと言ってソロでの活動もしない、できない、半引退状態の、暗黒の大阪時代に書いた曲。歌詞の大半は、当時働いていたレンズ工場の目の前の、神崎川に架かる鉄橋の下で書いた。歌詞こそ絶望的だが、曲自体はすごくメロディアスで、ドラマチックな転調なんかもあって、かなり気に入っている。
3.M&M
『女救世主ニーズ』と同じ時期に書いた曲で、私が世界で一番好きな映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に登場する殺人鬼カップル、ミッキーとマロリーが題材となっている。
私といえばM&Mーなんて思ってくれている人もいる。色んな人がこの曲を気に入ってくれて、中にはこの曲をカバーしてくれるアーティストまで現れて、そのカバーヴァージョンを聴いて気に入った人が「本家を観たい」と私のライヴに足を運んでくれたりなんかもして、そんなこんなで、私のバラードの代表曲となった。ライヴの定番でもあり、大切な一曲。
<ジャケット>
梅田の『ナカイ楽器』でギターを物色している私。この直後、地下のナカイ楽器へ移動した私は現在の愛器・月下美人に出逢う。本作には『金平糖』『M&M』と、カラフルなお菓子の名を冠した曲が並んでいるので、ジャケットもカラフルに仕上げてみた。
ライナーノーツ『Ⅱ』
<収録曲>
1.ハングリーマン~恋の尊厳死~(slow version)
17年程前、『ロックスター』という3ピースバンドをやっていた時に、スタジオで適当にギターを弾き、歌っていたら出来た曲。完全なる偶然の産物ではあったが、以降、現在に至るまで、私のライヴには欠かせないレパートリーの一つとなっている。歌詞は当時、救い難く恋に恋していた我が心情を吐露したものとなっており痛々しいほどに救い難い。本来、速いロックンロールなのだが、本作にはヘビーかつブルージーなスロー・ヴァージョンを収録。スタジオの貸し出し用ギター(モーリス)を使用し、ベース音をギリギリ限界まで上げて、凶悪な音を作った。
2.FLOWER
7、8年前、友人の結婚式で歌うために書いた曲。鍵盤弾きの友人が家で気軽に歌えるように、覚えやすいメロディーであることと、シンプルなコード進行であることを心掛けて書いたら、私の癖の塊のような曲になった。今までに、ライヴで演ったのは二度だけ。本作のレコーディング中、歌詞を何度も間違えたので、先日、飛び入りで歌った際には、この曲の時だけ譜面台を使い、歌詞を見ながら歌った。
<ジャケット>
『伊丹最北端の聖域』と呼ばれた、伊丹最北端にあった私の家の私の部屋で撮った写真。ビートルズの2ndアルバムを意識して、『Ⅱ』にこの写真を使用した。
ライナーノーツ『Ⅰ』
<収録曲>
1.未来へ
12、3年前、リプライズ時代に書いた曲。バンド時代のタイトルは、『サクラ』(他人が命名)だったのだが、今回、ソロに転向するにあたって『未来へ』に変更した。
初期ビートルズを意識して書いた曲で、曲の締めくくりには私が勝手に「ビートルズ・コード」と呼んでいるコードが登場する。この曲には2つのヴァージョンが存在するのだが、本作に収められているのは初期ビートルズに忠実なノーマル・ヴァージョン。
2.バタフライ
今年書いたばかりの新曲。ループ気味のコード進行に抑揚の激しいメロディー。新境地。「君は海 生かすも殺すも君の掌の上」というフレーズは、昨年、広島方面へ旅行をした際に、伯方の海を眺めていて閃いたもの。タイトルの「バタフライ」が、蝶を意味しているのではないというカラクリが隠し味となっている。
3.人間の羽根〜ヒトノハネ〜
これもリプライズ時代に書いた曲で、バンドに鍵盤弾きが加入したことが私の作風に大きな影響を与えることになり誕生した曲。バンドでレコーディングして、CDを販売したこともある。私の音楽を褒めたためしのない親父が「悪くない」と言ってくれた唯一の曲でもある。
<ジャケット>
三宮の楽器屋『リードマン』で韓国製の黒いギターを試奏している私。試奏しただけで買ったわけではないので、ジャケットに使用はしたが私のギターではない。
出会い頭のドレミファ丼
昨日、スタジオへ向かうべくギターを背負ってバス停でバスを待っていたら、小学3年生くらいの男の子を連れたお母さん(言葉からして外国人。フィリピン系の人だと思う)が話しかけてきた。
母「あの、ちょっとすいません。それはギターですか?」
私「はい。ギターです」
母「私、この子にギターを習わせたいと思って、ギター教室に連れていったんだけど、まだ小さいから無理って言われて、仕方なくピアノを習わせてるんですが、この子も本当はギターを習いたいみたいなんです。この子の歳でギターは弾けませんか?」
私「そんなことないですよ。手が小さいんやったら子供用のギターもあるみたいやし、ギターってピアノより簡単やから良いと思いますよ」
母「あなたは独学ですか?」
私「独学といえば独学です」
母「ギターの楽譜は難しいですか?」
私「読まれへんからわかりません」
母「読めないのに弾けるんですか?」
私「感覚で弾いてます」
母「あなたは天才ですか?」
私「たぶん違うと思います」
全てを感覚に頼り過ぎてドレミファソラシドさえまともに弾けないギター弾きが、突然、見ず知らずの外国人に真顔で天才呼ばわりされるという「出会い頭の事故」みたいな体験をした。











