これが、私の記念すべき処女短編集『リスパダール』である(400字詰原稿用紙、56枚)。
内容は、前ブログ『イッケイノウタ』の中で発表した5作品を大幅に改良したものが、「つみき」「麦乃助の憂鬱〜全てのバンドマンに捧ぐ」「ウ゛ァイブル」「カラータイマーズ」「和解〜祈りの少女」(旧タイトル「ミノルとシンジ」)の順に並んでいるというもの。
実は、個人的にはかなり気に入っていて、是非とも多くの人に読んでもらいたいと思っているのだが、こればかりは、ちゃんと本として出版されないことにはどうにもならないので、新聞等で調べて、いくつかの出版社に送り込んだ。所謂、「持ち込み」ですね。
ところで、私が、この短編集を書くにあたって、最大のテーマとしたのは、「絵を描くように文章を書く。」ということだった。それも、私の嫌いな、「風景描写」を極限まで削った形で、である。
「絵」は、書き手である私の想い浮かべるものと、読み手が想い浮かべるものとが、同じものである必要はなく、むしろ全然違う方が好ましく、例えば、10人の人が読んだ場合には、10通りの絵がそこにあって、読み手と読み手が読後の感想を語り合ったとしても、会話が全く噛み合わず、じゃんじゃんじゃんじゃん迷宮入りしていく…そんな絵を描こうと思って書いたのである。
シュール―読んでもらった身近な人たちから、一番よく聞いた感想がこれで、さらに、某出版社(一次審査はパスしたものの、4つある枠に入ることが出来ず、代わりに自費出版を勧められたが、そんな金はないと言って断った。)から送られてきた感想文には、「前衛的な作品」とか、「不条理な世界を突き詰めた一作」とか、「物語性は希薄だが、イメージ喚起力がある。」とか書いてあったが、全て、間違いではないと思うし、全て、私の計算通りで、素直に、嬉しい。
私は、この短編集に、大阪で暮らしていた時のことを書いた。それも、ありのままに、ストレートに書いたつもりだが、これが読み手にはシュールに響くというのが面白い。
1+1=2的な思考回路でガチガチになっている人はすぐに、「わかる」か「わからない」かで物事の良し悪しを判断したがるが、世の中には「わからない」けどしっかり存在していて、「わからない」からこそ面白いものもあるんだ!というのが、この短編集『リスパダール』の根底に流れるメッセージっちゃあメッセージなのである。
今、3つの出版社から返事を待っている(持ち込みを受け付けていない出版社からは、原稿が送り返されてきた。)ところなのであるが、どうだろう、本にしてくれるかな。これが書店に並んだらきっと面白いことになる。
「わからん!わからんけど面白い!」って言われたい。
ちなみに、「リスパダール」とは、介護の現場などで使用する薬品の名前である。これを服用すると、どんなに暴力的なおじいちゃんでも、舌が回らなくなったり、涎が止まらなくなったり、ベッドから自力で起き上がれなくて失禁したり…ふにゃふにゃになるのである。