私は、大阪の祖母の家から伊丹の中心部まで、電車に揺られて帰ってきたところらしく、街の片隅の小ぢんまりとした公園のベンチに腰掛けて一息ついていた(夢の中の伊丹は、建築物が全てレンガ造りだった)。
視線の先には長い手すりがあり、その上に友人が私の為に置いていってくれたとおぼしき薬の袋があったが、私はそれを無視して立ち上がり、公園の角を曲がって、大きな道路沿いを真っ直ぐ、バス停目指して歩いた。歩きながら、何気なく後ろを振り返ると、さっき自分がいた公園から、逃げるように走り去る男の後ろ姿が見えた。
嫌な予感がした。
その直後だった。まるで耳栓でもしたかのように、何も聞こえなくなり、前方からこちらに向かって歩いてくる女の人が、突然立ち止まったかと思うと、ビクッと身体を震わせて、耳を塞いだ。
まさか…!と、何故か思い、振り向いて公園の方に目をやると、公園周辺が火の粉に包まれていて、空が真っ赤に染まっていた。爆弾が爆発したらしい。私の脳裏に、手すりの上の薬の袋と、逃げるようにして走り去った男の後ろ姿が浮かんだ。
「第二警察署がやられた!」と叫びながら、大勢の警官が走り回っている中を、私はバス停目指して走った。
燃える空。舞い乱れる火の粉の中をバスはやって来た。そして、「虫」としか例えようのない有り様の群衆が、大きな獲物に群がるように我先にと乗り込んでいく。私は、この狂気染みた光景を、怯えながら眺めていた。
夢はここから一気に、ラストシーンへ跳んだ。私が、バスの窓側の席に座って、ぼんやり外を眺めているというものだった。バス停での狂気染みた光景からは想像できない、実に閑散とした車内だった。