「結婚して良かったあ!」という言葉をまあ聞いたことがない。また、「おしどり夫婦」なんてのにも、ほっとんどお目にかかったことがない。顔に「惰性です」と書いてある、茶の出がらしのような夫婦は吐いて棄てるほど見てきたけど。
実体験に基づいて、また、周りを見渡して、結婚というものに、微塵も夢を抱けない。最初は良くても、後々絶対面倒なことになる―としか思えない。
結婚生活を円満に営めるほど「忍耐」ということができないし、忍耐を楽しんでいるかのように魅せる「演技力」もない。
あらゆる願望の中で、結婚願望ほど稚拙なものはないと思う。想像力を疑ってしまう。
恋愛の果てに結婚という名の化け物が口を開けて待っているかと思うと、恋愛さえも、なんだかどうでもよくなってくる。ハッピーエンドで終わらない映画が、ハッピーな感じで始まることのグロテスク。
結婚―あれは、恋愛期間に甘い汁をむさぼり吸ったことに対する罰ゲームか何かだろう。