怒涛の試行錯誤

・「アンタももういい歳なんだから、しっかり自立しなさい」という言葉があり、これに並行して、「アンタももういい歳なんだから、さっさと結婚しなさい」という言葉がある。また、「結婚しなさい」という言葉自体に、自立を促す意味合いを含ませている場合もある。がしかし、しっかり自立できるくらいなら、結婚する必要なんてないんだから、実に矛盾した言葉だと思う。

・100%純粋な人間がいないように、100%自立できている人間もいないだろうと思う。もし本当に、100%純粋な人間がいるとすれば、これはもう本当に気持ちの悪い人間であって、昔から、「極端な清流に魚は住まない」と言うように、誰も彼に寄り付こうとしないだろうし、同様に、100%自立できている人間というのも、実に気持ちの悪い人間で、そんな、誰のことも頼りにしようとしない慇懃無礼な人間にはやはり、誰も寄り付かないだろうと思う。

・100%自立できている人間はいない。でも、「自分は100%自立できている」と勘違いするのは人の勝手なので、そんな人間は吐いて棄てるほどいて、この勘違いこそが人生を左右して、こういう人間に結婚という形は絶望的に不向きだろうと思う。勇ましく「誰の力も借りない」とか何とか言って、自分に酔い痴れながら孤立してゆけばよろしい。

・愛される人間というのは、真摯に、しかしながら愛嬌を湛えて、「助けてちょんまげ」と言える人間のことで、意外にもこの「ちょんまげ」が、相当に人を助けていたりするのではないかと思う。また、愛嬌というのは、魅力的なカッコ悪さのことで、このカッコ悪さは、自分の分をわきまえた謙虚な気持ちから来ていて、このカッコ悪さを魅力的にするのは、「それでも」自分の人格と人生を肯定しようとする前向きな姿勢から来ているんだろうと思う。

―嗚呼、試行錯誤の垂れ流し哉。


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