とりあえず生!

先日、あるお年寄りが「話題は何でも結構ですから、少し話し相手になっていただけませんか?」と言うので、ここぞとばかり恋愛相談を持ち掛けたところ、このような答えが返ってきた。

「和田さんは自分の考え方をきちんと持っておられるから、そのうちきっといい人が見つかりますよ。」

嬉しかった。が、私が引っかかったのは、別に珍しくもなんともないが、「自分の考え方を持っている」という言葉であった。

自分の考え方を持っている人間がいるということはつまり、自分の考え方を持っていない人間がいるということになる。そして、そんな人間はザラにいるということになってはいるが、そんなけったいな、気持ちの悪い人間が、世の中に、本当にいるのだろうか?

自分の考え方を持っていない人間というのは、考え方そのものを持っていない人のことを言うのだろうか。それとも、誰か他の人の考え方を持って生きている人のことを言うのだろうか。
前者は植物人間以外の何物でもないし、後者は他人の脳でもって自分の身体を動かすという器用極まる芸当、離れ業を平然とやってのけてしまえている超人だとしか思えない。

私は、植物人間にはなりたくない。かといって、超人になろうと思えば、35にもなって、「肉」とか「中」とか、何でもいいから適当な漢字を額に一字彫らねばならんことになることを思うと、自分の考え方に忠実に生きるのが一番楽なことであるかのように思われるのだがしかし、これがまたやってみると結構難しくて、往生している。

―ところで、私が超人を目指すとして、額に一字彫るとしたら…「生」になる。「セイ」ではなく「ナマ」と読んでいただきたい。


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