365×36

人間の中には天使と悪魔が棲むというという話を、今まで散々聞かされてきた。そして、それはたぶん事実で、かくいう私も例外ではなく、私の中にも天使と悪魔が棲んでいるらしいのだが…。

誰しも目を疑うと思うが、実は、私の中では、悪魔よりも天使の方が圧倒的に優勢なのである。私の中の街道を天使が「天使に非ずは人に非ず」などと、そもそも天使も悪魔も神であって人ではないとは思うのだが、まぁとにかく、そのように無茶苦茶なことを声高に言って闊歩しているのである。良いではないか?全然良くない。

欲望のままに動くことを得意とする悪魔には、緻密な計算みたいなものがない代わりに勢いがある。行動力があり、使命感がある。これを、臆病ゆえの屁理屈コキ、頭のデカい天使が押さえつける。

天使は、必要以上に石橋を叩く。渡る気があるのかないのか、執拗に叩く。叩いておるうちにノッてきて、橋の手前で奇声をあげて踊り始める。これを見た悪魔が「これはアカン」と、天使を怒鳴りつける。「何をさらしとんねん!」怒鳴りつけられて、踊りの腰を折られた天使が仲間を呼ぶ。四方から凶悪な人相をした天使がぞろぞろとやってきて、正義感に燃える悪魔を包囲、袋叩きにする。カラスの所業。天使の群れが離散した後に、ボロ雑巾のようになった悪魔の身体が横たわる。しかし「俺が行かねば誰が行くのか」と言って、またぞろ悪魔は立ち上がる。生まれたばかりの馬のような体で立ち上がり、橋を渡り始める。中央まで行ったところで、先程までの天使の執拗なドラミングにより橋が崩壊、憐れ悪魔は川底へ。

というような365×36。


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