経験を積んで、理論や理屈を知って腕を上げていく中で、確実に忘れていってしまうものがあり、一度上げてしまった腕はもう二度と下ろすことができない。
例えば、パンク。近頃のパンクは知恵を付け過ぎて、腕を上げ過ぎて、金をかけ過ぎて、メタルと見分け、聴き分けがつかなくなってしまった。パンクは、パンクをやってる人間が、パンクとは何かということをわかっていない時が一番パンクだった。
私は、ザ・クラッシュのアルバムだと、『白い暴動』が一番好きだし、オアシスのアルバムだと、完全に勢いだけで作り上げてしまった、「歴史的失敗作」として名高い『ビィ・ヒア・ナウ』が一番好きだし、ジョン・レノンという人については、丸眼鏡をかける前の、「LOVE & PEACE」とか言い出す前の、ザ・ビートルズのメンバーでいることを心から楽しんでいる頃のヤンチャなジョン・レノンが好きだ。
器用になったら終わりだ。死ぬまで下手クソでいたい。パンクが一番パンクらしかった頃のパンクスが持っていたような、チープながら純度の高い反骨精神を引きずりながら、歳を重ねていきたい。
「継続は力なり」ってなことを言うけれども、私は、いつまで経っても力にならない継続のあり方みたいなものを日々、模索しております。