消えゆく中から現れる道

メロディーにサビがあるように歌詞にもサビがある。俺に関して言えば、俺の曲に関して言えば、その「歌詞のサビ」というのは、メロディーのサビに当たる部分に持ってきているとは限らない。いわゆる「聴かせどころ」に持ってきているとは限らない。メロディーの流れに関係なく、自分にとってものすごく意味のある大切な言葉が曲のどこかに必ず一つはあって、それを俺は「歌詞のサビ」と呼んでいる。長いものもあれば短いものもある。例えば、極端に短いもので言うと、『赤い雨』の中の「私はここにいる」がそれに当たる。

先日完成した『俺はロックスタア』の中にももちろん歌詞のサビはあって、それは完成したと思われた日の翌日の朝に突然浮かんで書き加えた「捨てる神/選択肢を与えないで/拾う神/約束を一つ叶えて」という一節。

子供の頃から「自分は何も出来ない人間だ」という意識が強かった。いつもヘラヘラしていたけど、実は劣等感の塊だった。あれができない。これもできない。人並みにできることが何もない。道が消えていく。猛烈な勢いで選択肢が消えていく。ヤバい。観念しかけた時、僅かに一本だけ道が残っていて、それが音楽でありロックだった…という経験から生まれた一節。

そりゃ、数ある選択肢の中から一つを選ぶというのが理想だけど、残り福というか何というか、残された唯一の道が自分の愛する道だと言えるのなら、それはそれで素晴らしいことじゃないか!という、実は相当にポジティブな「サビ」なのだ。

ところで、今後俺はどこでライブをやればいいんだろう。単純に「どこで」という場所の話なのだが、どうも新規開拓する気になれない。はっきり言って、ライブハウスはない。相変わらず、接客業を営んでいるという自覚に乏しく、演者に対してもお客さんに対しても態度が悪い。ヤル気がなくてエラそうで暗い。その点、ライブバーにはまだ希望が残っているように思う。接客業を営んでいるという自覚があって、危機感のようなものを感じる。が、新規開拓するとなると、探してはいるんだけど、なかなか見つからない。演者同士がお互いを「音友」などと呼んで仲良しこよししてるだけの店なんて死んでも出たくないし、そんな奴らに「お呼びでない奴」扱いされるのは御免だ。

つまり、ここに来てまた、道がないのである。今、僅かにある道もいつ消えてなくなるかわからない。でも、ま、いっか…と思っている。最終的にはまた一本だけ、道が見つかるんだろうし、それが俺の進むべき道なのだろう。

思うに、捨てる神と拾う神は同一人物だ。


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