神の味噌汁

月に3、4回という頻度でライブをしている人がいる。ザラにいる。俺には真似できない。無理。皮肉でもなんでもなく、凄いと思う。やればやるほどお客さんが増えるとか、そういうことでもない限り、体力はもっても気力がもたない。なぜそんなにライブがしたいのか。ライブに何を求めているのか。何に突き動かされているのか。本当に、皮肉とかそんなんじゃなく、訊いてみたい。

俺の場合、ライブのたびに、その都度その都度、何かしら意味合いを見つけるところから始まる。で、その1回のライブの為に何度もスタジオに入る。セットリストだって簡単には決まらない。何度も作り直す。

「ライブ=怖い」という頭がある。俺の曲『復活の予感』の中に「処刑台」という言葉が出てくるのだが、これはステージのことを指している。そのくらい怖いと思っている。絶対に失敗したくない。と同時に、同じ事を繰り返したくないという気持ちがあって、1回のライブでかなりの気力を消耗する。消耗した気力はライブがうまくいって、うまくいったことで何かしら収穫と呼べるものがあればすぐに充填されるが、たとえライブがうまくいっても収穫と呼べるものがなかった場合には元の状態に戻るまで暫く時間がかかる。だから、「楽しみ」「楽しい」「楽しかった」という言葉を無理なく絶え間なく自然に言える人たちが不思議でならない。といって、誤解しないで欲しい。この「不思議」も皮肉なんかじゃない。本当にわからないという、素直な気持ち。教えて欲しい。何がそんなに楽しいのか。好きなことだからこそ、そうそう容易く楽しめないものなんじゃないか?と、俺は思ってしまう。片想い。ものすごく好きな人がいるとして、それって楽しいというよりはむしろ辛いことなんじゃないか?と思ってしまう。

ところで、昨日ようやく次のライブのセットリストが決まった。ソロ転向後に書いた曲よりバンド時代に書いた曲の方が多いという初めての流れ。今年3度目にして今年最後のライブ。全力を尽くそうと思う。全力を尽くして燃え尽きたら、一旦ギターを置こうと思っている。別に、疲れてるとか凹んでるとかじゃないし、「活動休止」なんて大袈裟なものでもない。ただちょっと、音楽について、音楽をやることについて、考えたり勉強したりする時間を作って、またライブがしたくなるのを待とうというだけの話。

一週間後、LA CASETAでお待ちしております。が、台風で中止になる可能性無きにしも非ず。もしそうなったら…仕方ない。神を呪いながら家でキーボードでも弾いて過ごすか。


心の中は美術館

音楽はジャケットを眺めながら聴くのが正しい聴き方である。ジャケットを眺めずに音楽を聴くというのは、目隠しをして飯を食うようなものである。

人間は外見か中身か。外見である。外見は中身の表れだからである。したがって、基本的に、ジャケットが良くて音楽が駄目ということは有り得ないし、ジャケットが駄目で音楽が良いということも有り得ない。

好きなジャケットを並べてみた。

  

これを見て、バンド名からではなくデザインから俺の好きな音を想像できる人はジャケ買いのできる人である。そして、もし心の中を視覚的に描写することが出来るとすれば、俺の心の中はこんな感じなんだろうと思う。


怜士、ロックンロール・ウェザー誌のインタビューに答える(後編)

Q 『eclipse』収録曲の中から「雫」の映像をシングルとして公開されましたが、この映像はどなたの手によるものなのですか?

A 俺が主宰してる海賊ライチrecordsのカメラマン、シスターマロンが撮ってくれた映像だよ。俺のライブ映像は全て、彼女の手によるものなんだ。

Q 映像には何か手を加えてありますか?

A うん。赤をどぎつくしてある。俺のイメージカラーだからな。太陽と月のステージは赤に彩られているけど、実際はこんなに強烈じゃないんだよ。

Q 赤と黒のコントラストが印象的な映像です。

A そうだね。赤を持ち上げたら黒も持ち上がったんだよ。そういえば親父が言ってたな。「光を綺麗に見せるためには影を綺麗に描かないと」って。ま、今回の映像に関して言えばただの偶然だけどな。

Q これまで、コンスタントに映像を公開してこられましたが、映像の制作と配信についてはどう捉えておられますか?

A まず、「楽しんでる」というのが一番だな。音楽と違って「本職」ではないからこそ楽しいんだよ。それから、映像を作ることの意味合いについては、今すぐどうのこうのというのは全く考えてない。来たるべき日に備えてるだけでね。いずれ必ず多くの人が俺と俺の音楽に興味を持つ日が来る。その時の為に準備してるんだよ。

Q アーティストの中にはYouTubeは音が悪いから嫌いだと言う方もおられますが、それについてはどうお考えですか?

A 音?良いとは思わないけど、そこまで悪いとも思わない。あれだけの音質があれば曲の良さは十分に伝わるよ。あれで伝わらないのなら、そもそも曲が良くないんだと思うよ。

Q 同感です。

A あともう一つ、映像について個人的に楽しんでる部分があるとすれば、チャートアクションかな。

Q チャートアクション…ですか?

A そう、チャートアクション。それぞれの映像の再生回数を売り上げ枚数に見立てて順位を競わせるんだ。野球のペナントレースに見立てても面白いよ。例えば今、まさに今、「グラサージュ」の再生回数と「雫」の再生回数の差は僅かに「1」なんだよね。で、俺はこれを「1ゲーム差」って呼んで楽しんでるんだ(笑)

Q なかなかの妄想力ですね(笑)

A 想像力と言ってくれ(笑)妄想力って…ん?でも、言い得て妙だな。というのも俺、子供の時、ガキンチョどもと走り回って遊ぶより女の子とおままごとする方がずっと好きだったからな。

Q え!?お、おままごとですか?

A そう。おままごと。家の近所をぶらぶらしてるとね、ゴザの上に正座してる女の子がいるわけ。膝に手を置いてね。で、偶然通りかかった見ず知らずの俺を呼び止めるわけ。「お父さん!」って(笑)

Q めちゃくちゃシュールですね(笑)

A  で、靴を脱いで、「ただいま」って言って家に上がると、「お風呂にします?ご飯にします?」って訊かれる。訊かれるけど、「お風呂にする」という選択肢はないんだ。

Q なぜですか?

A だって、お風呂に入る演技が出来るほど大きな家じゃないし、お風呂に入っちゃうと夫婦の会話ができないだろ?

Q 確かに(笑)

A で、「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。ご飯を食べながら夫婦の会話をする。この時、奥さんはすごく上機嫌なんだ。鼻歌なんか歌っちゃって。

Q それはまたなぜですか?

A 給料日だからだよ。おままごとってどういうわけだか、誰が奥さんであっても設定が給料日なんだ(笑)

Q (爆笑)

A だから、「今月もお疲れ様でした」と来るとビクッとする。「やっぱり来た!」って(笑)

Q で、ちゃんと封筒か何かを渡す演技をするわけですか?

A そう。豆腐ばりに分厚いやつをね。一度、リアクション見たさに「落とした」って言ったら鬼の形相でテーブルひっくり返されたよ(笑)

Q (爆笑)

A いや、本当に面白かったな。想像力があって、そこに入っていけたら○○ゴッコほど楽しいものはない。これは大人になっても同じ。例えばこのインタビューだって「ゴッコ」だけど、「ゴッコ」であることを忘れてやると本当に楽しい。

Q え?このインタビューは「ゴッコ」じゃないですよ。私どもの会社は実在しますし、このインタビューを掲載したロックンロール・ウェザー誌も来週には店頭に並びます。

A 君の妄想力もなかなかのもんだな(笑)ひょっとして君もおままごとが好きだったりしたんじゃないのか?

Q ええ。あの時テーブルをひっくり返したのは私ですから。

A お風呂にする。


怜士、ロックンロール・ウェザー誌のインタビューに答える

Q お久し振りです、怜士さん。

A おう。久し振りだな。君のところはよくインタビューしに来てくれるけど、今日は何?今、俺に訊きたいことなんてある?

Q ありますよ。まずはなぜ全曲新曲ライブ以降立って演奏するようになったのか。その心境の変化を伺いたいんですが。

A ある日突然、座って演奏していてもテンションが上がらなくなったからだよ。スタジオでリハーサルをしていて、「あれ?」ってね。ライブが迫っているのにテンションが全く上がらない。焦って、スタジオの壁を見たらストラップがぶら下がってて、それを使って久し振りに立ってやってみたら「おっ!」と。

Qそもそもなぜ座ってやってらしたんですか?

A いや、ソロに転向して初めてのライブの時は立ってたんだよ。2度目のライブから座ることにしたんだ。ある日、立って演奏している人のライブを観ていて、座って観ているお客さんとの間に温度差があるのを感じてね。演者が立つことでお客さんの冷めた感じが引き立ってしまっていた。そうしてお客さんの冷めた感じが引き立つことで今度は立って演奏している演者が浮いているように見えた。だから座って、表向きだけでもクールダウンして見せて、目線を合わせようと思ったんだ。

Q なるほど。

A でもね、クールダウンして見せるのを続けてたら、ある日突然、本当にクールダウンしちゃってる自分に気付いたんだ。優等生のフリをし続けていた不良が本当に優等生になっちゃってる自分に気付いて「これはアカン!」というね。立つことで俺は不良に戻ったんだよ。温度差なんてもうどうでもいい。だいたい、俺のパフォーマンスを目の当たりにしても冷めていられるというのは、それはもう不感症以外の何物でもないんだから、ここへ来る前に病院に行けという話だ(笑)

Q (笑)その温度差が現在制作中の『eclipse』には顕著に現れているとの事ですが、それをあえて作品として発表することにしたのはなぜですか?

A あれはね、温度差のようで温度差じゃないと俺は捉えてるんだ。最近、そう思うようになったんだよ。あの時、あの人たちは冷めてたんじゃない。かと言って「俺に圧倒されてた」なんて言うつもりもない。俺はそこまで自惚れ屋じゃないからね。俺はただ、あの時、お客さんの中にあったのは「?」だったと思うんだ。「これは一体何なんだ」というね。

Q 私もあの日、会場にいましたが確かにそんな雰囲気がありました。私の中にはあの不思議な雰囲気に対する「?」がありました。

A 「冷める」と「冷える」とじゃ意味が違うと思うんだよ。人は自分が知っているものについてだけ良し悪しがわかる。人が「つまらない」と感じるというのは、その類の良いものと比べた場合に良くないから「つまらない」となるわけだね。「あ、この感じ知ってる」と思って一瞬、その類の良いものを思い浮かべて、期待して、熱くなる。でも、その良いものに比べて全然ダメだと気付いた途端に熱くなったものが「冷める」んだ。

Q では、「冷える」とはつまりどういうことですか?

A 自分の中に無い、知らないものが出てきて「わからない」となった時、人は「冷える」んだよ。怖いんだ。で、その得体の知れないものが猛烈な勢いで主張してくると人は凍りつくんだ。俗に言う「フリーズ」だな。そう、だから俺は、あの時のお客さんの大半はフリーズしていたんだと思ってるんだよ。

Q なるほど。でも、中にはハンドクラップしてくれる人たちや、怜士さんの「ロッケンロー!」に「ロッケンロー!」で応えてくれる人たちもいましたね。

A 俺のお客さんだよ。俺の音楽をよく知ってる人たち。で、気に入ってくれてるからこそ、雷雨の中わざわざ観に来てくれたわけでね。当然ながら、あの人たちに「冷える」はあり得ない。ま、俺のパフォーマンスがサッパリだった場合には一瞬にして「冷める」んだろうけどね。厳しいんだ(笑)

Q 怜士さんの音楽がわかるって凄い事ですね。凄い人たちだと思います。

A 失礼か!(笑)でも、そうだね、本当に感謝してるよ。あの人たちがフリーズしている人たちを見て「へえ〜これがわからんねや」って悦に入ってくれてたら嬉しいよね。思いっきり馬鹿にしてやればいい。演者同士が火花を散らすように、お客さん同士も火花を散らすようになれば面白い。俺のお客さんは音楽をよくわかってるからね。俺のお客さんが「冷める」ようなパフォーマンスをする奴は音楽やめちまえ!そんな奴の客は客やめちまえ!ってなもんだよ。

Q お話を伺って、『eclipse』を聴くのが待ち遠しくて仕方なくなってきたんですが、年内のリリースに漕ぎ着けることはできそうですか?

A わからない。わからないけど、君みたいにアルバムが出るのを待ち遠しく思ってくれている人たちが「冷める」前に出したいとは思っているよ。


一番好きな音色

リアムの新作、毎日聴いてる。何度聴いても飽きない。本当に素晴らしい。素晴らし過ぎる。死んで、あの世に一枚だけCDを持っていけるとしたら迷わずコレを選ぶ。世界で一番好きなアルバム。誰かがネットに「ベテランと呼ばれるアーティストが良いアルバムを出しても全盛期を超えることはほとんどない。でも、リアムは完璧に超えてきた!」って書いてたけど、本当にその通りだと思う。はっきり言って、オアシスのどのアルバムより良い。最近のノエルのソロなんて…相手にならない。オアシスの再結成?どうでもいいよ。

新作が発表されたタイミングでこの映像が公開されたのでご紹介。捨て曲ゼロの新作の中にあって一番好きな曲。そのライブ映像。アンプラグド。めちゃくちゃ声出てる。絶好調。最高。

リアムの声。一番好きな『音色』。どんな楽器もかなわない。素晴らしいメロディーにこの声が乗ったら…無敵だ。


詳細決定

10/13(SUN) 川西能勢口 LA CASETA

【OPEN/START】17:30/18:00

【CHARGE】¥500+1drink(¥300)

【TIME TABLE】

18:10〜 タイガーマスク

18:55〜 和田怜士

19:40〜 石田由紀子

20:25〜 SIN

21:10〜 えーゆにっと


※フードのみ持ち込みOK。お店ではホットドッグのみ販売。お店の前にコンビニあり。


ハードル

次回、10月のライブは歌詞やタイトルに花が登場する曲を並べた「花束」にするつもりだったのだが見送ることにした。というのも、どうやら今年最後のライブになりそうだからである。総決算。爆発して燃え尽きたい。それに、初めて出るお店。お客さんの反応に関係なく「これがわからん奴は知らん!」というライブにしたい。なので、セットリストを組み直すことにした。

ライブが終わったら、早急に新作『eclipse』を完成させる。それから、過去に発表したアルバム、4タイトルの見直しをする。ある作品は廃盤になるかもしれないし、ある作品はボーナストラックを加えるなどして生まれ変わるかもしれないし、ある作品は音が変わるかもしれない。それから、そう、新しい曲を作らねば!多少ライブから遠ざかることになろうとも、やるべきことは山ほどある。

来年以降のライブ活動については今のところ完全に白紙。頭の中にビジョン的なものが何もない。ただ、持ち時間30分という窮屈な枠だけはなんとか打ち破っていかねばな…と思っている。

何はともあれ、次のライブ。目の前のハードルに集中せねば!ここでコケたら今年やってきたことが水の泡!来年もへったくれもない!全力を尽くして華々しく燃え尽きるから、是非とも観に来て欲しい!

ちなみに、持ち時間は40分。10曲近くやるぜ!


握手

あからさまに、おそらく誰にでも分かる形で、前作を超えてきた。

凄い…。

メロディー、音、声。全てが理想的。俺が一番好きなやつ。俺がやりたいやつ。

リアムが思う「良い音楽」と、俺が思う「良い音楽」って、たぶん、一緒なんだと思う。だから、リアムの「ここ、カッコ良いだろ?」というのが、いちいち分かる。

傑作だ。

これに勝てるアルバムがあるとすれば、俺の『eclipse』くらいのもんだ。


奴が来た

帯に書かれている「なぜリアム・ギャラガーなのかって?リアム・ギャラガーだからだよ」を目にした時点で早くも一発、強めのジャブをもらってしまったような気がする…。

封を開けるのに驚くほど気合いを要する。


奴が来る

ここ数ヶ月間、指折り数えて待っていた。あまりに楽しみにし過ぎて一向に日が進まず、「その日」は一生来ないんじゃないか?とすら思った。ただ、「その日」を万全の状態で迎えるためには、「その日」の衝撃に耐えうる壁を作っておく必要があった。壁というのはつまり、全曲新曲ライブとツーマンライブを成功させて、良いライブ盤を作って、1、2本映像を公開して、自信を漲らせておくということ。「俺は俺で最強だ」というものがないと、とてもじゃないが「その日」の衝撃には耐えられない。

遂に、リアムのニューアルバムの発売日が明日に迫った。もう随分前に予約してあるから、普通に考えれば今日、フライング・ゲットすることになる。大丈夫。俺は俺で最強だ。恐れることはない。仕事が終わったら事前に「入荷しました」という連絡がなくても店に押しかける。

「その日」は来た。世界最強のロックスターが日本最強のロックスタアをしばきに来る。

上等だ。かかってこい!