犬と猫と私と前世

〈犬〉犬は猫と比べると、飼い主の家の敷地内にもう一つ余計に、自らの家を所有してしまっている分、不自由である。

〈猫〉先日、爽やかに晴れ渡った朝、川の堤防を歩いていて私は見た。家と家との間に立てられた塀の上を、朝日に目を細めながらゆったりと歩いている猫の姿を。そうして、その猫が足を止め、頭上に垂れ掛かっている木の枝の先に鼻を伸ばして、枝と戯れ、枝が揺れるのを楽しみつつ、そこに咲いている花の匂いを嗅いでいる優雅な姿を。

〈私と前世〉猫は自由で、私は猫背で、さらに私には猫を彷彿とさせる八重歯が口腔内の上下左右にあり、以前にも申し上げた通り、我が最旧友の長年に渡る分析によれば、私は性格的にも極めて猫寄りだそうで、そういえば極端に「窮屈」ということを嫌うので、そんなこんなを踏まえて、私の前世は猫であったに違いないという確信を深めれば深めるほどに、私にとって犬という生き物は、確かに可愛いけれども、見ていて息の詰まる歩くドM、悲しい性を持って生まれた、窮屈な窮屈な生き物なのである。


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