あの夏の人生訓

「吸うな!吐け!吐いたら吸えるから!」

私は子供の頃(まあ、今でもそうだが…)、泳ぎが大の苦手で、夏休みになると、強制的に、学校の特別水泳教室に参加させられていたのであるが、上記の言葉はその時、クロールの息継ぎが覚束なかった(まあ、今でもそうだが…)私に向かって、教師が繰り返し投げ掛けた言葉なのであるが、今にして思えば、この言葉は馬鹿にできない。そっくりそのまま、純然たる人生訓であると思われる。

最近、巷では、『断捨離』なる言葉が流行していて、書店に行くとこの断捨離関連の本がズラリと並んでいるが、「断捨離」というのは元々、ヨガの思想から生まれた言葉で、要するに、「無用なものを躊躇なく捨てる勇気を持つことによって、自由になりましょう。」という思想で、これは、考えてみれば、上記の教師の言葉に直結する思想、人生訓であると思われる。

ひとつ物を持つと、ひとつ自由を失う。ひとつ物を手放すと、ひとつ自由を得る。
最近、私が極端に物欲に乏しくなったのは、私の無意識下でこの思想が大きく機能しているからだと思われる。例えば、今や私は、財布もチャリンコも出来ることなら持ちたくないし、したがって、車を所有するなんてのは、考えるだけでゾッとする、狂気の沙汰なのである。

欲しいもの、本当に欲しいものが今の私にもあるとすれば、これはもう「才能」以外にないなと思う。
才能を心から渇望する時、物というものは、視界を妨げる障害物でしかなく、また、行動範囲を著しく狭めるだけのお荷物でしかないらしいのである。

「吸うな!吐け!吐いたら吸えるから!」


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