男でよかった

まずは落ちついて、机の前に座り、ゆっくり深呼吸をする。それから、方々から取り寄せた資料を分析して、迷いながらも、「これは違う。これも違う」と呟きつつ、ひとつひとつ削っていき、徐々に的を絞っていく。そうして、二者択一、究極の選択というところまできたら、ここで頭の出番は終わり。さようなら。頭のスイッチをOFFにして、できる限り動物に近い生き物になって、嗅覚の嗅ぎ付けるに任せる。そうして嗅ぎ付けたものはもう絶対に疑わない―ということを考えるところまでようやく来れたらしい今朝の私は、かつて、母親の腹の中にいる時、自分が男になるのか女になるのかを選ぶ時にも、これと同じことをしたんだろうなと思った。

あの時、まだ人ではなかった私の嗅覚は、男になることの方を嗅ぎ付けて選んだ。それは正解だったのか―正解だった。

私は、女という生き物が大好きだが、大好きだからといって、私が女になってしまったのでは、女と恋愛ができないし、それよりなにより、男と恋愛せねばならんかったんだから。なぜ好き好んで野郎と恋愛せねばならんのかという話だ。だから、男になって正解だったし、そういう意味では、私は生まれる前から女好きだったと言える。

女好きが高じた女性願望―ないわけじゃない。ないわけじゃないけど、好きなことは仕事にしないほうが良いと昔から言うからね。

男でよかった。


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