目を閉じる<弍>

誰が何と言おうと、親父の胸中にはやはり、芸術家として志半ばに終わる無念があったと思う。死んで、病苦から解放されることへの喜びに似た感情はあったとしても、芸術家としてはやはり、無念でしかなかったと思う。そんな、父親である前に芸術家だった人間の最期を真近で見ておきながら、何も感じるものがなかったとしたら、いや、さすがにそれはないな…たとえ大きく感じるものがあったとしても、感じたものを具体的に自分の生き方に反映させるということができなければ、息子である前に芸術家の末端としてあの人と接してきた私という人間は駄目だと思う。


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