目を閉じる<六>

満足感
「安い肉はいっぱい食べる。高い肉はちょっとだけ食べる」

損得勘定
「安い物は長持ちしない。高い物は長持ちする」

金銭的な「高い」「安い」の問題を越えた価値観の持ち方として、この二つの言葉は、すごく簡潔で庶民的だけれども、大切な言葉だと思う。これは「質は量で補いませう。量は質で補いませう」という話ではない。安い肉はてんこ盛れ!安物は随時買い換えれば宜しい!という、そんな単純な話ではない。言葉の向こう側に「質で量は補えても、質を量で補うことはできない」という、文面にはない意味合いが漂っているのを感じるから不思議である。

私のような貧乏性の人間が、突然何を思ったか視野を広げてものを見たり、長い目でものを見たりして、「そういうことだったのかあ!」と感嘆せざるを得ない答えの中の答えらしきものを見つけてしまった場合に、まず求められるのは気合いだ。薄い木の皮のようなもので包まれた、オージービーフに慣れた目には明らかに腹を満たせそうにない量の松坂牛と、5万円のコンポに手を出す気合いだ。

例えが貧相だ。


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