目を閉じる<五>

私は昔から、松尾貴史という人の冷めた視点が好きで、彼の「塵がいくら積もろうが山にはならない」という言葉が大好きなのだが、私は、私がこのように毎日毎日コツコツコツコツああでもないこうでもないと考えて、その都度掴み取るその都度の答えのようなものが塵ではないことを切に祈っている。湯水の如くに時間を費やして得たものが積んでも積んでも山にはならない塵だとあまりに悲しい。

願わくは、性懲りなくああでもないこうでもないを続ける中で掴み取るものが、小さいとはいえ塵よりは幾分大きなもので、それが私の中にちゃんと積もって「山」と呼べるものになって、この山が高くなればなるほどに、私が物事を見上げることが減って、見下ろすことが増えることを、切に祈っている。


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