追憶のミラクル・ファクトリー

ちょっとした裏話。ブログ上のコメントにその反響のほどが表れているわけではないが、別ルートからの反応によれば、思いの他、「前田さん伝説」が好評だったみたいで、そのリアクションを受けて続編として書いたのが「寺方さん伝説」なのである。

先日、「寺方さん伝説」を読んだある人が、こんなメールをくれた。

「最後は寺方さんが死んじゃった」

仕事をズル休みするたびに人殺しを繰り返してきた寺方さんが、最後は、仕事をズル休みするたびに迷惑をかけてきた同僚たちに殺された。自分で自分の首を絞める結果になった…と読んだのである。

私は「なるほど」と唸ると同時に、そんな興味深い読み方をしてくれている読者がいるということを知り、嬉しく思った。書き甲斐がある。

それにしても、「前田さん伝説」と「寺方さん伝説」を生んだあの大阪の工場は、超人的に濃いキャラを持った人間のるつぼであった。あの中では、私の個性のレベルなど、極めて凡庸。中の中くらいでしかなかった。私はやはり伊丹の人間。外部から入り込んだ傍観者で、ただひたすらに人間観察を楽しんでいた。
今にして思えば奇跡。あの時、あのタイミングで、大阪各地に散らばっていた選りすぐりのけったいな奴らが、物の見事にあの工場に結集したんだと思う。あの時、あの場に居合わせることができたことを、本当に嬉しく思う。

恐ろしくけったいな奴らばかりだった。一人残らず、奇人変人の類であった。でも、不思議なことに、「嫌な奴」は一人もいなかった。


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