三木くん ☆☆☆
背が低く、メガネを掛けており、常に謙虚で大人しかったが、性格の芯の部分に、毒と強さを感じさせる男だった。成形一の働き者で、よく仕事ができて皆からの信頼も厚く、仕事が無いなら無いでほうきとちりとりを持って掃除をし続けた。そして、そんな日頃の姿勢を神様はちゃんと見ているもので、クビになる直前、彼はロト6で55万円当てた。工場からの支給ではなかったが、退職金が出たのは彼だけである。
江口さん ☆☆☆☆
成形の中の「金型」という部門で働いていたスレンダーな女の人で、私より若いのは確かだが、どこかミステリアスで、年齢不詳だった。成形で働く女の人は、ブサイクで性格の悪い大越さんと江口さんだけだったから、決してブサイクではないし性格の良い江口さんはおのずと成形のアイドル的存在となった。実におっとりとした性格の人で、男連中は疲れると皆、江口さんとの談笑に癒しを求めた。まさに、成形のオアシスだったのである。防塵服を脱ぐ時、腰まで伸ばした髪がバサーッとなって、それが、戦闘機から降りてヘルメットを脱ぐ米国の女性パイロットみたいでカッコ良かった。
峠くん ☆☆
ホモみたいで気持ち悪かったから、可能な限り近づかないようにしていた。
中村くん ☆☆☆☆
福岡くん、与古田くんと同じく、高校を出たばかりの子だった。肌が白くてなよっとしてて、性格的にも雰囲気的にもふにゃふにゃで、闘争心が無いというか責任感が無いというか軽薄というか…そう、強烈にチャラかった。しかし、笑いのセンスには目を見張るものがあって、同い年の与古田くんなんかはかなり影響されていた。彼の笑いはとてもシュールだった。「自分だけがわかるであろう笑い」のようなものを追求していた。シュールな笑いについては、私も「伊丹最北端の至宝」と呼ばれた男。負けじと壮絶な火花を散らせた。彼には悪いが、相手が悪かったな。
寺方さん ☆☆☆☆☆
遂に、以前にも当ブログで紹介したことのあるレジェンドの登場である。彼こそ、ミスター成形。ミスター残念。駄目人間の縮図。腐った十字架を背負いし男である。
ガリガリにやせたししゃもと横山やすしを掛け合わせたような風貌で、歯は総じて黒く、黄色い汗をかき、メガネのフレームの付け根の部分をセロテープで止めており、止めてはいるもののしっかりと固定されていないからゆがんで、常に「殴られた人」みたいになっており、小刻みな引き笑いが下品で、同僚に貸してもらった80円を給料日まで返せなかった。また、ズル休みをするたびに親兄弟を殺し、果ては親戚、友人までを殺したが、寺方さん自身はいつまで経っても死んでくれなかった。口癖のように「俺を本気で怒らせたら血まみれやで」などと言っていたが、皆、裏で「寺方さんが血まみれになるんやろな」と言っていた。派遣社員全員がクビになった後、飲み会が催されたが、寺方さんだけ呼ばれなかった。