強者どもが夢の跡~後輩編②~

井上くん ☆
成形一の男前と言われていたが、クール過ぎて無口だったのでつまらなかった。

小林さん ☆
仲良くはしていたが、ほとんど印象に残っていない。ひょろっと背の高いヤンキー崩れみたいな人だったという記憶しかない。

伊藤さん ☆☆☆☆☆
矢野・兵動の矢野さんがメガネを掛けて髭を生やしたような風貌で、雰囲気はビーバップハイスクールの下っ端のヤンキーみたいだったが身体が弱かった。成形一の愛されキャラであり、最強の癒し系だった。声が甲高くて、いつもチョケていた。相当ないじられキャラで、先輩後輩を問わず常にいじられていたが、いじられればいじられるほどに嬉々として、彼の周りにはいつも温かい笑いがあった。新世界のジャンジャン横丁界隈に住んでいたにも関わらず酒が一滴も飲めなかった。私が、いつかどこかで再会できることを心から祈っている人間のうちの一人である。
(「まえがき」に添えた、防塵服を着た私の写真は伊藤さんが撮ってくれたものである)

与古田くん ☆☆☆☆
茶髪のロン毛。ギリシャ彫刻のような彫りの深い顔立ち。高校を出たばかりのヤンキーで、ドラマーだったから、音楽学校に行く資金を貯めるために工場に来たが、猛烈に働いてお金を稼いでいるうちに彼女ができて、一人暮らしを始めて、夢を見失ってしまった男。現場で「誰が一番男前か」という話になった時、皆は井上くんが一番の男前だと言ったが、私は与古田くんが一番の男前だと言って譲らなかった。あからさまなヤンキーだったが、本当によく働いたし、私なんかよりずっと仕事ができた。そして、私のようなグズグズな先輩に対しても非常に礼儀正しかった。

亀川さん ☆☆☆☆☆
凶悪な武蔵丸みたいな風貌で、入ってきた時から群を抜いて怪しかった。私が仕事を教えたのだが、わずか3日でタメ口をきくようになり、4日目には私に指示を出すまでになった。結果、誰にも相手にされず、ハミゴにされてすぐいなくなったが、後日、与古田くんから「和田さん!亀川さん、コンビニでエロ本一冊買うのにごっつ悩んでましたよ!」という果てしなくどうでもいい報告を受けて死ぬほど笑った。

中山さん ☆
メガネを掛けたぽっちゃりとした人で、ブルース溝脇さんと共に設備を担当していた。真面目で、穏やかで、あの工場で働いていることに違和感のようなものさえ感じさせる人だった。私は、工場をクビになった後、介護職に転向し、正雀の老人施設で働き始めたのだが、働き始めたばかりの時、ロッカーで服を着替えていると見覚えのある人が入ってきた。中山さんだった。


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