焼鳥屋で夕食を済ませた後、妹さんが行きつけのバーに招待してくれた。
突然フラッとキース・リチャーズが入ってきてもおかしくない雰囲気のバーで、カウンターはほぼ満席。所狭しと広島弁が飛び交い、賑わっていた。
BGMがずっとレゲエだったので、マスターに「ロックンロールはありますか?」と尋ね、リクエストしてみたところ、「ロックンロールはないけど、スカならあります」とのことだったので、スカのCDを回してもらった。
黒ぶちメガネの、少しぽっちゃりとはしているが実に色気のあるマスターが、私の着ている軍服の左肩、蝶のワッペンを見て「ヒッピーみたいですね」と言ったので、「ヒッピー大好きです」と答えた。
ヒッピー。もう随分長いこと口にしていない言葉だが、久しぶりに聞くと実に新鮮で、私に似合う、良い言葉だなと思った。
「あなたは何者ですか?」
「ヒッピーです」
酒と煙草をやり始めた頃、六甲のビートルズ・バーで覚えたジャック・ダニエルのジンジャー割りを4杯飲んだ。なんとも言えない青春の味がして、不思議なことに、全然酔わなかった。