裏ペスト

ラジオを聴いていた。

DJは男で、ゲストは私の存じ上げない声優の女で、その女がスタジオに入ってくるや、DJの男が叫んだ。

「癒しのオーラが凄いですねえ!」

―子供の頃、綺麗な大きな石をひっくり返した途端、だんご虫やゲジゲジがわんさか出てきたことを思い出した。


恋のアカン尺度

私の昔の彼女が、ある日ふと、こんなことを言ったのを思い出した。

「アタシ、サボテン枯らす女やねんけど大丈夫?」

私は、全っ然大丈夫であった。「何本でも、片っ端から枯らしたったらええがな」と言った。

しかし、今、一人で酒を飲んでいてふと思ったのは、以下の言葉を自分の彼女に言われた場合にはどうだろうか?ということである。

「アタシ、缶詰め腐らす女やねんけど大丈夫?」

これはアカン。大丈夫ではない。「早よ食えや!」と叫んで、ちゃぶ台、上に何も乗っていないことを確認してからひっくり返して、それからまた、静かに元に戻すと思う。


てんとう虫のロック

「別にいいじゃねえか。ヒトに迷惑掛けたわけじゃないんだから」とか、「何をしようとあなたの勝手だけど、ヒトに迷惑だけは掛けないでね」とかいう言葉を聞くたび、何を言わんとしておるのか、おおよその意味はわかるんだけれども、頭の片隅に、どうしても「?」が浮かぶ。

ヒトに迷惑を掛けないということがそんなに崇高なことなのか?と思いもし、また、ヒトに迷惑を掛けるってことが、そんなに残虐非道なことなのか?と思いもする。

何をもって「迷惑」とするのか―それは各々のさじ加減で、馬鹿の思うところの「迷惑」にいちいち付き合ってたんじゃ、こちとら何もできんだろうと思うのである。

腫れ物に触るような付き合い方を要するほど、ヒトってやつは偉いんだろうか。「ヒト」という、言葉だけが先行していて、ほとんど顔の見えない存在に対して、何故、そんなに気を使わねばならんのだろうか。

ま、虫の分際でこんなことを言うのもなんだが。


猛る虫

何故、私は酒を手放せないのか。また、何故私は、シラフの時の自分よりも、酔っ払っている時の自分の方が好きなのか。

何故、私は煙草を手放せないのか。また、何故私は、頑なにメンソール系の煙草には手を出さないのか。

何故、私はお笑い芸人というものを敬愛しているのか。また、何故私は、北野武、松本人志、太田光、笑福亭福笑といった、毒のある芸人を特に好むのか。

何故、私は「ロックンロール」なる在り方を信仰の対象としておるのか。また、その具体的な対象となる人物の筆頭が何故、こともあろうかリアム・ギャラガーなのか。

何故、私は恋を崇めて愛を崇めないのか。また、何故私は、執拗なまでに「結婚」という形態を否定するのか。

何故、私は、音楽や文章という形で「表現する」という段になると、かくも赤裸々かつ攻撃的になれるのか。

何故、私は太宰治が、太宰文学が好きなのか。また、何故私は、デカダンスなる言葉に惹かれるのか。

何故、私は生まれつき子供が嫌いなのか。

―以上、8つの疑問に対して、本日、自分の中で答えが出たので、ここに報告する。

要するに、私は「やんちゃ」でいたいらしいのである。ずっと、「やんちゃ」でいたいと思っているらしいのである。「やんちゃ」でなくなった男は男ではないと考えているらしいのである。ただ、それだけの話なのである。

私は、「ただそれだけの話」を、必要以上に懸命に生きている虫なのである。


レノンの裏側の男

「恋」という言葉を多く吐いている間は、人は、若い。

「愛」などという、わけのわからない言葉を真顔で抜かしだした時点から、老いは始まる。

恋のまま結婚して、結婚した後も恋でいられて、子供が生まれた後も恋でいられるのなら、結婚も悪くないと思う。

「愛」という化け物が、全てを台無しにする。


歪みたくて歪んだ歪みに苦悩

私が、人を好きになった時に、「勢い一発体当たり!」的なやり方しかできないのは、何も今に始まった話じゃないし、「勢い一発体当たり!」の後に、どうするのか、どう動くのかということについて、全く計画性がないというのも、今に始まった話ではないのであるが、それにしたって、最近の私の恋愛下手には目に余るものがある。
35にもなって下手クソ過ぎる。人を好きになるとたちまち前後不覚。何がなんだかわけがわからなくなって、我ながら何を言ってるんだか、何をやってるんだかさっぱりわからなくなる。

昔からかなりの恋愛下手ではあった。でも、ここまで酷くはなかった。

好きな気持ちに嘘はなくて、その気持ちは相手に対して真っ直ぐなんだけれども、自分の中に、昔はなかった、人を好きになることへの強烈な抵抗があって、この抵抗が真っ直ぐな気持ちを歪めやがって、その結果、わけのわからないことを言ったりしたりしてしまうのである。

助けてくれ。

要するに、私が言いたいのは、サントリープレミアムモルツってそんなに旨いか?ということなのである。


なにわともあれいさぎよく!

潔いこと。とにかく、潔いこと―これが「ロック」なんだと思う。多少滅茶苦茶でも構わない。とにかく、潔く。

自分に忠実であれば、ただそれだけのことで、「個」は立つし、自分に忠実でさえあれば、人は皆、基本的にロックな存在だ。

自分に忠実―「簡単なことのようで難しい」なんて、眉間に皺を寄せることしか脳のないようなゴミ臆病者どもが、ロクに考えもせずにややこしいことを抜かすからややこしくなる。本当は、真相は、「簡単なことのようで簡単なこと」だ。ただ潔くあれば良いだけの話なんだから。

潔く!

潔く!

潔く!


憑依せよ!

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俺は、本当は、レノンよりもこいつになりたい。

好きなものは好き!
嫌いなものは嫌い!

嫌いな奴と肩が触れた日にゃ、問答無用に殴りかかる。

こいつは「俺はビートルズになりたいんだ!」と言ったが、俺は、心底、リアム・ギャラガーになりたい。

ジョン・レノンの何倍も、リアム・ギャラガーになりたい!

リアム・ギャラガーになりたい!