―まるで別世界にいるかのようだった。
写真はライヴのクライマックス。名曲『don´t look back in anger』演奏中のもの。
兄貴が「thank you.see you」と呟くやいなや、あの、イマジンを思わせるピアノの音が聞こえてきて、怒号のような歓声が起こって、会場爆発。
大合唱。
大合唱。
大合唱。
会場全体が、一人の男と、一つの曲を中心に、完全に一つになっていた。うねる人の海。圧巻だった。
クライマックスには必ずこの曲を持ってくるんだろうことをわかっていながら、あの前奏が始まると、一瞬にして理性が吹っ飛んでしまった。「この曲は一体なんなんだ!?」と思って、頭に浮かんだ言葉は「魔法」だった。
ライヴが終わると、会場の前で剣吾くんと落ち合ったのだが、お互い、ニヤニヤしつつも茫然自失。口をついて出る言葉は「凄い」とか「反則」といった短い言葉のみだった。
兄貴の魅力は、ズバリ、「曲が良い」ということであって、この一点に尽きるし、乱暴な言い方をすれば、本当に、それだけなのだが、それが全てで、それが凄いのである。
ライヴ中、アンコールが始まる前に、私の後ろにいる客がこんな会話を交わしているのが聞こえた。
「どの曲やって欲しい?」
「なんでもええよ。兄貴の曲やったら!」