『苦悩の年鑑』より/太宰治
私には思想なんてものはありませんよ。 すき、きらいだけですよ。
私には思想なんてものはありませんよ。 すき、きらいだけですよ。
ただ、好きなのです。 それで、いいではありませんか。 純粋な愛情とは、 そんなものです。
進まなければならぬ。 何もわかっていなくても絶えず、 一寸でも、五分でも、 身を動かし、進まなければならぬ。
愛は言葉だ。 言葉が無くなりゃ、 同時にこの世の中に、愛情も無くなるんだ。 愛が言葉以外に、 実体として何かあると思っていたら、 大間違いだ。