昔は、人を好きになった時に色々と考えた。
「あの人は一見ああいう感じに見えるけど、本当はこういう感じに違いないから、そういうところが俺のこういうところにマッチして―」などと無駄な分析、自問自答を際限なく繰り返して、それだけでお腹いっぱいになっちゃって、いつの間にやら感情がフェイドアウトしちゃって、ただ足踏みするばかりで、肝心の「物語」がちっとも始まらなかったのである。
今にして思えば、分析や自問自答をしている時点で駄目なのだ。理性が働いている―ということはすなわち、相手のことを大して好きではないということだ。
人が何かを本当に好きになった時に真っ先に吹っ飛ぶのは理性だ。その対象が恋愛であれロックンロールであれ、理性だ。
私がなぜ酒を呑むのか。
私がなぜロックンロール馬鹿なのか。
私がなぜ恋愛ジャンキーなのか。
酒もロックンロールも恋愛も、全て、理性を失わせてくれるものだからだ。もっともっと理性を失いたい。
理性を失っている時の私は賢い。
「good job]