ブルースには敵わない

昨日、私は天王寺にいた。

大きな道路沿いの商店街からちょいと脇に目をやると、アーケードに覆われた昭和の忘れ物のような飲屋街があって、それはそれは目を疑うような見事な異空間だったので写真を撮ってもらった。

今、神戸新開地のライヴバーではブルースが熱いらしいが、それは大阪天王寺、新世界界隈のライヴバーに於いても同じことなのではないか?と思った。鼻を突く、尿臭染みた猛烈な人間臭が街全体に泥のように沈殿していて、この中にあっては、J-POPなどと呼ばれる使い捨てを前提としたコンビニエンスな音楽なんて完全にお呼びでないし、ロックでさえも「ちんこに毛の生え始めた生意気な若造」でしかないんだろうと思う。ドロドロに黒いジャズか、病的に時代錯誤なフォークか、出来損ないの演歌ならまだ何とかなるかもしれないが、それでもやっぱりブルースには敵わないと思う。

濃い、良いブルースを書きたかったら、ギターを抱えて新開地か新世界で一年ほど暮らしてみるべきだと思う。そして、あの猛烈な人間臭を1曲の中に余す所なく充填することができたら、その1曲だけで、その辺の見掛け倒しのブルースマンなんて皆吹き飛ばせると思う。しかしながら、コンビニエンスな街の中にある、コンビニエンスな人々で賑わう場所にあっては、「あなたは非常に気持ちの悪い人間である」という烙印を押さえて村八分。吹き飛ばされて、帰る場所は新開地か新世界しかなかった…みたいなことになるような気もする。


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