俺の中の森で

ネットで新曲『the answer song』のイメージに合う絵を探していて偶然見つけるまで、この絵の存在を知らなかった。初めて見た時の衝撃は筆舌し難い。調べてみたところ、ロシアの「移動派」の画家、イワン・クラムスコイが1880年に発表した《月明かりの夜》という作品であることがわかった。

俺、割と長いことソングライターやってきた。作曲というのは、他の芸術同様、自分の中にあるものを外に出す作業だと思うんだけど、長いことやってると、やってるうちに、逆に、自分の中に形作られていくものがあるのを感じるようになって、それがまさにこの絵全体から受ける印象そのものだと思った。

バラードを書く時…っていうか、深くメロディーを思う時。音楽を一人の女性に例えた曲を書く時。音楽を人として感じたいと思う時。いつも自分の中に女の人の気配があるのを感じていた。はっきりとした姿形は靄がかっていて見えないんだけど、その都度、なんとなく想像できる姿形があって、それを曲として自分の外に出してきたような感覚がある。で、この月明かりに照らされて偉そうな座り方をしている女の人を見つけた時、「この人や!」と直感した。

画家だった親父は生涯に渡って自分の妻(俺のおかん)を描き続けたが、「僕はあの人を描いてるわけじゃない。あの人を通して僕の中におる大きな女の人を描いてんねん」とよく言っていた。言わんとしてること、今なら痛いほどよく分かる。

ライブの時、ステージ上にこの絵の巨大なタペストリーを掲げて歌えたら最高だろうなと思う。いつか本物を見てみたい。

 


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