鑑定眼

最近、無意識の内に、相手の目の奥を深く覗き込んでいる自分がいる。
実際に相手の目を見つめているわけではないが、感覚的に、目ではない目で、相手の目を、目ではない目を、深く覗き込んでいる自分がいる。

こいつは信用できる人間なのか。それとも、信用できない人間なのか。

ちゃんと見ないと間違えてしまう―という怖さが、常にある。


対既成概念

私みたいなもんに、「既成概念を破壊してやるぜ!」などと、遅れてきたロックンローラーみたいなことは口が裂けても言えない。私に言えるのはただ、「既成概念を無視し切ってこますぜ!」ということのみである。

破壊することはできない。でも、無視することならできる。無視することができるかできないかで、状況は大きく変わってくる。

既成概念を無視して、下品な人間を相手にしない。下品な人間を相手にしないことが、既成概念を無視することに繋がる。

どうやら、そういうことらしい。


鰻屋〜嗅ぐな!食え!〜

昔から疑問に思っていたのだが、好きな人に好きと言えないような臆病者に限って、他人の恋愛を詮索したがるのは何故なのだろうか。

他人の恋愛を嗅いで我がの飢えをしのぐ―金があるにも関わらず、鰻屋の前に鼻をクンクンさせて突っ立って、匂いだけで腹を満たそうとしている病的な節約家が、今日も空腹感を誤魔化せたと言って喜んでいる。

我がの空腹感に、飢餓感に、ちゃんと向き合おうとしないから、いつまで経っても、好きな人に好きと言えない。

霞を食ってヘラヘラ笑ってられるのは仙人だけで、普通の人間が仙人と同じことをしておったのでは3日と身体がもたん。と、私は思うのだが、もし、私のこの認識に異論があり、「自分、は、霞、食って、生きて、いける。」と何故かたどたどしくおっしゃる方がおられるのであれば、その方は、私をシバくなり焼くなり刺すなり沈めるなりする前に、是非とも鰻屋のオヤジに匂い代を支払いに行っていただきたいものである。

たまに、私が鰻屋のオヤジだったりする。


いっけちゃん

そろそろ旧友たちに会わないといけない。旧友たちに会って、本来の私を思い出させてもらわないといけない。
かつて、「いっけちゃん」と呼ばれていた男のことを、思い出させてもらわないといけない。

「いっけちゃん」は、ちゃん付けで呼ばれるだけあって、こんなにピリピリビクビクした人間ではなかったはずだ。

いつも緊張している。この緊張の糸がブチ切れて、腰砕け的にふにゃふにゃっと情けなく崩れ落ちる前に、思い出さないといけない男の名は―いっけちゃん。


ここだけの話

賢明な人間は、「ここだけの話やで。」という言葉を多用する人間を信用しないものである。

さらに賢明な人間は、「ここだけの話やで。」という言葉を多用する人間のことを信用しているフリをして、情報を聞き出しはするものの、決して他言しないものである。他言はしないが、得た情報を自分にとって有効に活用するものである。

賢明な人間は、人間の「品」というものを常に考えているが、同時に、「世の中、綺麗事だけじゃどうにもならん!」ということもよ〜くわきまえているものである。


内なる激走

1日に10考える人の1週間、ひと月、1年と、1日に1しか考えない人の1週間、ひと月、1年とでは、「別物」と呼んでも差し支えないくらいの、大きな開きがあると思う。

私はよく人に、すぐに考え方が変わるとか、やり方が変わるとか言われるが、ちょっと待てと言いたい。

私に対して「変化が早過ぎる。」的な指摘をする人のほとんどは、1日に2くらいしか考えていない人である。でも私は、こう見えて、1日に7くらいは考えている―という自負がある。

例えば、私の考え方が一週間で変わったとする。そしてそれを「早過ぎる。」と指摘する人がいたとする。指摘した人が14考えた時点で、私は49考えている。僅か一週間で、35歩もの開きがある。これがひと月ともなると、指摘した人が62考えた地点で、私は217考えていて、そこには155歩もの開きがあるということになる。

私に対して「すぐに変わる。」などと、時間軸でのみ物事を判断して皮肉っぽく指摘、批判する前に、その「すぐ」の密度的なものの違いを考慮していただきたいものである。


虚無票

今日は休み。で、今日は選挙の日で、応援している政党がないわけではないのであるが、私は、行かない。というのも、私にはどうしてもわからないのである。一票の重さというものが。

私の一票―「たかが」はあれど「されど」はなし。全っ然、何の影響力もないだろう。

例えば私にも、日本のバンドで好きなのはいくつかあるが、私が彼らのアルバムを発売日に買ったところで、彼らのアルバムがヒットチャートに躍り出たことは一度もないよ。

EXILEだAKB48だと言って盛り上がっている世の中の片隅で、ある種の屈辱的な無力感を感じつつも嬉々として、ソウル・フラワー・ユニオンの新譜を買っている人間に、一票の重さなんてわかるわけがないよ。