音楽は「音」を「楽しむ」と書く―というのはよく言われる言葉だが、今まで音楽をやってきて骨身に染みて思うのは、この言葉がいかに大切かということだ。
例えば、「音楽にとって一番大切なことって何なんだろう」という言葉を口にしたとすると、答えはすでに、言葉の冒頭に出てしまっていることになる。だから、この言葉についてさらに考えを進めていくというのは、逆に答えから遠退いていってしまっていることになる。
音楽の難しさというのは、スタート地点にゴールがあるということの難しさなんだと思う。一歩、答えを探しに出掛けると、一歩、答えから遠ざかってしまう。
音楽をやる上で「技術」と呼ばれるものは無数にあるが、その中でも一番修得するのが難しいのは、音を楽しむ技術、楽しみ続ける技術なんだと思う。
音楽は楽しくて当たり前―ではない。楽しむためには、楽しみ続けるためには、努力が要り、技術が要り、才能が要る。ということらしい。
スタート地点にゴールがある。
私が太鼓を叩く時に心掛けてる事と似てる気がします。
やぐらの下で太鼓を聴いている人を笑顔にするために
一番大事な事を自問自答していた時代がありました。
でも、10年弱ぐらい前に自分なりに気付いた事がありました。
技術的な事は土台として確かに必要です。
音の大きさ、リズム感、テクニックなど。
でもそれがある程度のレベルまであった場合、一番
必要な事だと感じたのは「自分が楽しむ事」です。
「笑顔は伝染する」とはよく言ったものです。
自分が本当に楽しく笑顔で太鼓を叩いていると、やぐらから
下を見下ろした時に、やぐらを見上げて目が合う人は皆、
笑顔なんです。
これに気付いた時から、私はやぐらの上で誰よりも
太鼓を楽しんで叩こうと思うようにしています。
自分が楽しんで、その自分を見て聴く人が楽しんで。
その聴いてくれてる人の笑顔を見て、また太鼓が楽しくなる。
そんな相乗効果をいつも実感してます。
恐らくバンドでも全く同じなんでしょうね。