歩く大阪王

要するに私は、自分の輪郭みたいなものを、はっきりさせたいと思っているわけです。

自分を食いもん屋に例えるならば、洋食屋なら洋食屋。和食屋なら和食屋。中華屋なら中華屋―「うちはこれやってます。これで勝負しております。これ以外はやっておりません」という看板をバアーンと掲げて、それを食いに来た人にそれを出したい。ファミレスみたいに、洋食も和食も中華も出すけど、どれもこれも中途半端というのは絶対に嫌だ。

わかるものはわかる。
わからないものはわからない。
好きなものは好き。
嫌いなものは嫌い。

阪急伊丹駅の近くに『大阪王』という餃子専門店がある。ここはまさに「餃子専門店」で、昔から餃子とビールしか置いておらず、注文も二人前からしか受け付けていない(私は昔、この店に入ってきた客がビールと餃子を一人前だけ注文して、店長に断られているのを見たことがある)。
店は商店街の角にあり、店内は狭く、8人も入れば満員なのだが、それでもこの店は、伊丹の名店だと言われ続けている。

言うなれば、私は、あんな人間になりたいと思っている。他人は私に、炒飯やラーメンも出せと言うし、餃子も一人前から出せと言うし、店をもう少し広くしろと言うが、もし、大阪王が炒飯やラーメンを出すようになり、餃子を一人前から出すようになり、店がちょっと広くなったら、私は二度と、大阪王へは行かなくなるだろうと思う。

間口を広くとって、味を曖昧にしたくない。


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