詩『人魚』

凍りついて見上げていた

そこに君の肉体はなく

見覚えのある真っ赤なドレスが立っていた

胸元には猫の目に似たガラスの玉が輝いていたが

突然弾け飛んで螺旋階段を駆け降りると

僕の足元で音を立てて割れてしまった

割れてしまった

割れてしまった

インクの瓶

言葉を一切受け付けない真っ白な便箋が

一瞬にして

深い青に染まった

あそこに浮いているのは人魚ですか?

手遅れでしょう

手遅れでしょう

手遅れでしょう

僕が口にしたのは毒なのです

毒の味を覚えたら

僕は

あなたに

すべてを打ち明けるつもりでいます

毒の味を覚えたら

僕は

あなたに

すべてを明け渡すつもりでいます

毒の味を覚えたら…


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